開国の父 老中・松平忠固

【947】第10話 A3 『徳川慶喜』≫

○増上寺・境内
やぶさめが行われている。
堀田と慶永が隣の席で話し合っている。
慶永「ハリスめはまだ蕃書調所におるのですかな」
堀田「はい」
慶永「何故です。もう上様との謁見は終わった。もはや用はなかろう。とっとと下田に帰らせるべきだ。いや、母国に帰らせるべきであろう」
堀田「・・・」
交渉が始まったことは言わない。
堀田「慶永殿、ほら、始まりますぞ」
慶永「おお、次は慶喜殿か」
馬に颯爽をまたがっている一橋慶喜(20)
警戒に馬を走らせ、見事に的を射抜く。
慶永「お見事」
堀田「おお」
こともなげに平然としている慶喜の顔。
慶永「いやぁ、本当に素晴らしい。やはり次の上様は慶喜殿しかあるまい」
堀田、またかの顔。
他の者が続いてやぶさめを行っている。
次々と射抜かれる的。
慶喜、堀田の前に慶喜が現れる。
慶永「慶喜殿、お疲れ様でござった」
堀田「見事でございましたな」
無表情の慶喜。
慶喜「いえ、それほどでも。あれしき当然のことなれば」
慶永「ほっほっほ。それは頼もしい。ところで慶喜殿、堀田殿が貴殿に非常に興味を持たれていての。御父君とそなたとの考え方が違うと聞いて、ぜひ話を伺いたいそうだ」
堀田「慶喜殿は、水戸学である尊王攘夷の思想ではないと伺ったが」
無表情の慶喜。
慶喜「若干二十歳の私の考えなど聞いても何の意味もないと思われますが」

慶永「そんなことはないぞ。貴殿は将軍になる資格のある御三卿・一橋家当主である。老中首座の堀田殿もぜひ意見を参考にしたいのだ」
堀田、付き合いでうなずく。
慶喜、面倒くさそうに
慶喜「私は水戸出身です。尊王の気持ちは高いと自負しております。しかし、父の言うような攘夷には賛同しません。攘夷など無益だと思われます」
堀田、初めて興味を示し、
堀田「ほう、ではそなたは交易をすることはどう思う」
慶永、ピクッとなる。
慶喜「西洋の文明は我が国よりもはるかに進んでおりまする。交易をしてこれを取り入れることは決して我が国の害ではない、と思われます」
堀田、父との違いに少し驚き、そして感心して頷く。
慶永、交易肯定に不満ながらも、堀田の満足そうな顔を見て、こちらも満足する。

 

 

 

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