開国の父 老中・松平忠固

8月2020

【929】第9話 A1 『本心』≫

○阿部邸・外観(夕)
厩には二頭の馬がつながれている。

 

○同・控室
一人座って待機している水野。
心配そうな表情。
水野「・・・」

 

○同・廊下
緊張の面持ちで廊下を歩く忠優。

 

○同・阿部の部屋
阿部の寝室に通される忠優。
病床で横になっている阿部。
傍らに介抱する妻。
忠優「!!」
阿部の姿を見た忠優、驚く。
そこには痩せこけた末期症状の阿部。
忠優「・・・」

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【928】第8話 D4 『危篤』≫

○築地・船着き場
船から降りてくる忠優ら。
声「御前!」
待っていた水野。
降りてきた忠優を捕まえ、お付の者達から離れたところに連れていく。
水野、息を整えて
水野「伊勢様が・・・、阿部正弘様がご危篤です」
忠優「なにーっ!」
絶句する忠優。
すぐさま水野が連れてきた馬に乗る。

 

○道中
忠優と水野が馬を走らせている。
忠優「(まさか阿部殿が・・・)」
ハィと馬の尻を叩き、さらに急ぐ忠優。

 

 

 

【927】第8話 D3 『願い』≫

○築地船着き場
沖に洋式軍艦・鳳凰丸が停泊している。

 

○同・甲板
玄仲と撰之助が乗っている。
撰之助「す、すごいな。俺は洋式軍艦には初めて乗った」
興奮気味にあちこちを見ている。
撰之助「大砲はこのようにいて装着されているのか・・・」
喜ぶ撰之助をみて満足そうに玄仲、
玄仲「この船はご公儀が作った船だが、大きさはそれでも中小に分類されるそうだ。西洋の船はさらに大きい。メリケンの黒船など倍の大きさで、さらに鉄でできているらしい」
撰之助「これの倍・・・、鉄で・・・」
玄仲「どうだ、驚いたろう。西洋人はこれらの船に乗ってやってくるのだ。かの者たちと交わりたいだろう。いろいろと未知の話などを聞きたくないか」
撰之助「・・・」
あちこち見ていた撰之助、玄仲の方に向き直り、
撰之助「商いの話ならやらんぞ。おまえはこの船を見せて俺が圧倒されると思ったろうがそうはいかん。俺だって火薬の専門家だ。西洋の技術力は文献で知っている。実際こうして西洋船に触れて、一層思ったわ。俺の火薬で異人どもを粉砕してくれると」
玄仲「・・・」
撰之助「だが、玄仲。ありがとう。おまえが見せたいと言っていたもの、確かに俺の心に響いたぞ」
玄仲、困り顔。
そこへ、向こうから剛介が現れ、玄仲に合図をする。
玄仲、その合図に喜んだ表情を見せ、
玄仲「撰之助、、実はおまえに見せたいものがあるといったのは、もう一つあるのだ」
撰之助「ん?」
向こうから剛介に連れられて、笠をかぶった一人の人物がやってくる。
剛介「玄仲、お連れしたぞ」
玄仲「恐悦至極に存じます」
撰之助「・・・」
誰だ?といぶかしむ撰之助。
玄仲「このような場所で大変失礼致します、殿」
撰之助「!!」

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【926】第8話 D2 『早駕籠』≫

○街中
水野が早駕籠で走っている。
焦りの表情の水野。
上田藩邸に入っていく。
声「水野筑後守でござる。上田候はいらっしゃられるか」

 

○藩邸内
水野に応対する役人。
水野「なに、いない?築地じゃと」
苦虫をかみつぶしたような表情の水野。
水野「馬はあるか。馬を借りる」
慌てて馬を用意する役人。

 

 

 

【925】第8話 D1 『橋本佐内』≫

○江戸市中
『安政3年(西暦1856年)11月11日』
薩摩藩邸から江戸城までの長い行列。
行列の先頭が江戸城内に入っても最後尾はまだ薩摩藩邸の中という長く、華やかな行列。
籠の中の篤姫。
『篤姫』

 

○江戸城内
家定と祝言をあげる風景。
家定の顔。
篤姫の顔。
斉彬の満足そうな顔。
斉昭、慶永も笑顔。
苦々しい顔で見ている直弼。

 

○料亭
豪華な料理を前に宴席を囲んでいる慶永と斉彬。
斉彬の後ろには西郷。
慶永の後ろには橋本左内(22)。
慶永「いやぁ、めでたいめでたい。上様と篤姫様の結婚の儀、つつがなく終わりましたな」
斉彬「ありがとうございます。だいぶ時間がかかりましたのでこちらも大きな肩の荷が一つおりました」
慶永「これでまた大きな前進ですな。篤姫様がご懐妊ということになれば、これほどめでたいことはござらん」
斉彬「はい。篤子は強い女子です。江戸城に入った以上、この斉彬の娘として立派にお役目を果たしてくれるでしょう。もしもの場合にも・・・」
慶永「・・・」

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【924】第8話 C4 『貨幣鋳造』≫

○上田藩邸・外観(夜)
井上が忠優と水野に報告している。
忠優「そうか。アメリカとの交易の第一商品は銅に樟脳、次に茶・・・か」
井上「はい」
水野「・・・」
忠優「・・・」
井上「それと、水野様。さっそくハリスが通貨の重量交換の件、言ってきました」
水野「そうか」
忠優「阿部殿にはその件、説明してあろうな」
水野「もちろんです」
忠優「で、阿部殿はその報告に対し、なんと言っておったか」
井上「それが、ここのところ体調を崩されておりまして登城されておりませんで」
忠優「そうか」
水野「以前にご説明した通り、1ドルの価値は1分にござる。やはりその要求は決して受け入れることはできませぬ」
井上「・・・」
水野「もし1ドルを3分にしてしまったら、1ドルを3倍の価値で交換しなくてはならなくなります。我が国にとって大きな損失でしょう」
井上「岩瀬殿は、重量において1ドルが3分であるのは事実、それを拒むことはこちらが未開な国だという指摘を免れぬのではないか、心配しておりまする」
水野「なんだと」
井上「水野様はおっしゃられておりましたな『我が国の産物を売って、それを富国強兵の財源とする、すなわち我が国から売ることのみを行う。我が国が異国から購入するものなどない』と」
水野「ああ」
井上「つまり、それは輸出のみを考え、輸入は考える必要がない、ということ。輸出のことだけ考えればいいのだったら、1ドルが3分になるなら利益が3倍になる、ということに他ならないではないか・・・」
水野「なにぃ」
井上「岩瀬殿はそう言うのです」

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【923】第8話 C3 『ファビウス/ハリス会談』≫

○下田奉行所・外観
表にオランダ国旗が掲げられている。

 

○同・内
岩瀬がファビウスと会っている。
岩瀬が書状を読んでいる。
岩瀬「・・・」
ファビウス「それはイギリスがシャムと結んだ条約文です。香港総督ボウリングは日本にもこのような条約を結ばせるつもりです」
岩瀬「・・・」
ファビウス「クリミア戦争も終わり、ロシアは敗れ、イギリス・フランスが勝利しました。もはや艦隊を引き連れてのボウリングの来日は現実のものとなるでしょう」
岩瀬「ファビウス提督、目的は通商条約とということだが、緩優交易とは何の制限もないのか。関税は掛けられないのか」
ファビウス「・・・」
こいつ、やるな、という表情。
ファビウス「当然関税は掛けられます。どうでしょう。一挙に緩優としないで、まずは仲介貿易から始めてみては」
岩瀬「仲介貿易?」
ファビウス「はい。我らオランダがアメリカやイギリスなど新たにやってきた西洋諸国との間に立って仲介するのです。例えばこれ」
机の上にバターとコーヒーが置かれる。
ファビウス「これはバターとコーヒーです。いずれも日本人には無価値だが、西洋人にとっては必要なものであるから、オランダ人が会所を通じて西洋人に売るのです。その売り上げに対し、あなた方が関税をかける。こうすれば、あなた方も税収を得ることができるではないですか」

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【922】第8話 C2 『交易方針』≫

○江戸城・大広間
大勢の幕臣が列座している。
堀田が書状を読み上げている。
その横に目をつむりながら阿部。
牧野ら老中陣、下座には、水野、川路ら官僚陣が座っている。
堀田「本邦において、航海の厳禁を変革し、外国へ船舶を差し向け、交易互市の利益を以て、富国強兵の基本を成し、今の時勢にかないしかるべきやに候」
静まり返る場。
ガヤガヤと話し声が沸き起こる。
水野「・・・」
真剣なる表情の水野。
一方で、穏やかな表情の川路。
一同の反応を見ている堀田や阿部。
阿部「現在下田にアメリカ、長崎にオランダ船が来航している。函館にはロシア、そして程なくイギリス・フランスもやって来るだろう。これらの国々はこぞって交易を求めてきている。緩優交易は世界万物自然の潮流であり、日本国がただ一国で鎖国を守ろうにももはや存続することはできない。これに固執すればこれら強国数か国と戦になる」
一同、静まり返る。
阿部「そうであるならば、思い切って航海の厳禁を変革し、こちらからも外国に船を派遣し、交易互市の利益を以て、富国強兵を進めるのだ」
うんうん頷く堀田。
声「緩優交易・・・」
声「交易互市・・・」
一同、決意に満ちた表情。
阿部「航海の伝習は始まったが、長崎でオランダ人に教わるよりジャワなど海外に留学した方が早い。留学生の派遣も考えている」
一同「・・・」
さすがにガヤガヤとなる。

 

 

 

【921】第8話 C1 『ハリス来日』≫

○下田港
『下田』
外国船が入ってくる。
『安政3年(西暦1856年)7月21日』
その船を物見台から見ている井上。
井上「・・・」
船のマストにはアメリカ国旗。
甲板に立つ二人の男。
ハリスとヒュースケン。
ハリス「ここがサムライの国か」

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【920】第8話 B4 『決闘』≫

○上海・バンド地区(夜)
湾岸にコロニアルスタイルの洋館が立ち並んでいる。
ガス灯に灯りがともされ、幻想的で美しい夜景が広がっている。

 

○レストラン・テラス(夜)
忠優と水野、クルシウスが食事をしている。
夜景に感嘆している忠優。
忠優「これが西洋・・・か」
同じく驚嘆している水野。
水野「信じがたい、この世のものとは思えない風景です。恐ろしい」
忠優「恐ろしい?」
水野「ええ、ここは西洋ではない。唐の国なわけですからな。彼らの技術力をもってすれば世界のどこでもこうなるのでしょう。もちろん」
水野を見つめている忠優。
水野「我が国も含めてです」
忠優「・・・」
夜景を見ている忠優。
忠優「水野、我は貴兄とは違う感想を持ったぞ。我が国と西洋とではとてつもなく大きな技術力の差がある。しかし彼らにできて我らにできないということはないはずだ。彼らに追い付くにはどうしたらいいか。それは交易しかあるまい。交易こそ唯一の我らが生き残り、そして彼らに追い付く方法だと、今ここで我は確信したぞ」
水野「・・・」
あっけにとられる水野、ようやくその真意が分かり、微笑む。
水野「(この御人は本当にとことん前向きな方なのだな)」
クルシウス「ちょっと失礼」
席に立つクルシウス。
夜景を見ている忠優。
そこへ入ってくるガラの悪い西洋人の船乗りたち。
船員A「おい、汚らしい豚が店に迷い込んでいるぞ」
船員B「酒がまずくなる」
船員Aがいきなり水野を殴りつけ、吹き飛ばされる水野。

(さらに…)

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