開国の父 老中・松平忠固

【920】第8話 B4 『決闘』≫

○上海・バンド地区(夜)
湾岸にコロニアルスタイルの洋館が立ち並んでいる。
ガス灯に灯りがともされ、幻想的で美しい夜景が広がっている。

 

○レストラン・テラス(夜)
忠優と水野、クルシウスが食事をしている。
夜景に感嘆している忠優。
忠優「これが西洋・・・か」
同じく驚嘆している水野。
水野「信じがたい、この世のものとは思えない風景です。恐ろしい」
忠優「恐ろしい?」
水野「ええ、ここは西洋ではない。唐の国なわけですからな。彼らの技術力をもってすれば世界のどこでもこうなるのでしょう。もちろん」
水野を見つめている忠優。
水野「我が国も含めてです」
忠優「・・・」
夜景を見ている忠優。
忠優「水野、我は貴兄とは違う感想を持ったぞ。我が国と西洋とではとてつもなく大きな技術力の差がある。しかし彼らにできて我らにできないということはないはずだ。彼らに追い付くにはどうしたらいいか。それは交易しかあるまい。交易こそ唯一の我らが生き残り、そして彼らに追い付く方法だと、今ここで我は確信したぞ」
水野「・・・」
あっけにとられる水野、ようやくその真意が分かり、微笑む。
水野「(この御人は本当にとことん前向きな方なのだな)」
クルシウス「ちょっと失礼」
席に立つクルシウス。
夜景を見ている忠優。
そこへ入ってくるガラの悪い西洋人の船乗りたち。
船員A「おい、汚らしい豚が店に迷い込んでいるぞ」
船員B「酒がまずくなる」
船員Aがいきなり水野を殴りつけ、吹き飛ばされる水野。

剛介「なにをする」
表で見張っていた剛介が飛んでくるが、船員Bに店の外に放り投げられる。
忠優も殴りつける船員A。
忠優は立ち上がり、その腕を掴み、背負う。
大きく空中に舞う船員Aの足。
一回転して仰向けに放り投げられる船員A、忠優が背負い投げを放ったのだ。
テーブルがひっくり返り、ケンカが始まったと歓声が盛り上がる。
船員A「やりやがったな」
立ち上がり、ファイティングポーズを取る船員A。
船員B「ひゅーっ、今夜のファイトの始まりだぜ」
船員C「こいつはチャイニーズ・マーシャルアーツの使い手だ」
対峙する忠優と船員A。
ボクシングスタイルの ファイティングポーズの船員A、ジャブを繰り出す。
いくつかは手で払うものの、見慣れないジャブがヒットしていき、ワンツーも食らう忠優。
初めて見るボクシングスタイルに対応できない。
周囲は『やれやれー』などと盛り上がっている。
船員B「そりゃかなう訳ねーぜ。奴のボクシングはリバプール育ちよ」
パンチを浴びる忠優。
組もうとするがボクシングスタイルとフットワークで捉えられない。
忠優「(くっ、あの弾むような縦の動き、捕まえることができぬ・・・)」
ふらついてくる忠優。
忠優「(これは勝てぬな)」
そこへ戻ってきた剛介。
剛介「殿」
人だかりにふさがれる。
船員A「へへ、豚公。これでおねんねしな」
大きく振りかぶった右フック。
ようやく体を起こした水野。
水野「ご、御前」
朦朧とした忠優の顔面にまさにヒットしようとする拳。
その瞬間パンチをかいくぐり、船員の腕を巻き込むように忠優が腕を絡める。
そのまま倒れこみ脇固めの格好になる。
船員A「いてててて」
腕をねじり上げる忠優。
そこへ戻ってくるクルシウス。
クルシウス「これはなんとしたことだ。私はオランダ領事のヤン・ドンケル・クルシウスである。これで収めねば英国政府に通達しお前たちの会社を操業できなくするぞ。さぁ、やめるんだ」
事態は収集する。

 

○バンド地区(夜)
ふらふら歩いている三人。
水野「御前、大丈夫ですか」
水野が肩をかしている。
忠優「みたか、水野、やつら、こぶしの繰り出し方も我らと違うぞ」
傷などそっちのけで西洋との違いに驚く忠優におもわず吹き出す水野。
水野「ぷーっ。確かに私などあやつの繰り出す拳がまるで見えませんでしたぞ」
クルシウス「それにしても私は最後に上田候が何をやったかの方が驚きです。彼は痛がっておりましたが何をしたのです?。まさに東洋の神秘です」
忠優「そうか・・・、本当に違うな、西洋と東洋は」
微笑む三人。
水野「それより御前、帰れますか?船はもう明日ですが。何ならもう2,3日こちらにいてもいいですが」
忠優「いやいい。渡航計画は9日間、それ以上長くなると隠密の行動が漏れる危険がある。それに」
忠優を覗き込む二人。
忠優「これ以上ケンカが大きくなったらイギリスと戦争になりかねない」
水野「ははは」
クルシウス「そうなったらもう私にも制御できませぬぞ」
笑いながらバンドを歩いていく三人。

 

 

 

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