開国の父 老中・松平忠固

【812】第1話 C4 『忠優、老中就任』≫

○江戸城・外観
『江戸城・3年後』

 

○同・廊下
忠優を先頭にさっそうと歩く一団。
忠優のすぐ後ろに続く二人の男、石河政平(43)と井戸覚弘(45)。
『石河政平』
石河「3年ぶりの江戸城はいかがでござりまするか」
忠優「懐かしいな、だが感慨に浸っているわけにはいくまい」
『井戸覚弘』
井戸「いよいよ忠優様がご老中に。我らかつての直属の部下としては、これほどの喜びはござらぬ」
忠優「フッ、石河、貴様は勘定奉行になって何年になる?」
石河「5年になります」
忠優「井戸、貴様の長崎奉行は何年目だ?」
井戸「3年目です」
忠優「そうか、これからは思う存分働いてもらうこととなろう。覚悟はよいな」
石河・井戸「はい」
歩いていく一行。

 

○将軍謁見の間
将軍から老中就任の辞令を受けている忠優。
上の間には将軍家慶。
『第12代将軍家慶』
平伏する忠優。
家慶「ついにきたか、伊賀よ」
顔を上げる忠優。
家慶「大坂城代としてかなり暴れてきたようだな。話は伝わってきておるぞ」
忠優「恐悦至極」
にやりと笑う忠優。
家慶「伊勢と伊賀、車輪の両輪がようやくそろったというわけか。伊勢と共によろしく頼むぞ、忠優」
忠優「御意」
満足そうな家慶の顔。
忠優の顔。
老中陣の顔。
N「嘉永元年(西暦1848年)10月1日、松平忠優は老中に就任した。齢36歳。そして就任時の幕府最高首脳部である老中は、以下の4名である」
阿部の顔。
『福山藩主・阿部伊勢守正弘』
N「老中首座、阿部伊勢守正弘、29歳。老中に就任してから5年目を迎える」
牧野の顔
『越後長岡藩主・牧野忠雅』
N「越後長岡藩主・牧野忠雅、49歳。席次は阿部に次ぎ、阿部と共に老中に就任し、阿部の補佐役として終始歩調を合わせ、阿部を支えている。阿部の親戚でもある」
戸田忠温の顔。
『下野宇都宮藩主・戸田忠温』
N「下野宇都宮藩主・戸田忠温、44歳。老中就任3年目。正室の甥が阿部にあたる」
松平乗全の顔。
『三河西尾藩主・松平乗全』
N「三河西尾藩主・松平乗全、53歳。老中就任は戸田と同じく3年目。阿部は母方の従弟にあたる」
忠優の顔。
N「このように忠優以外は全て阿部の縁戚という、難題に次々と対応しなければならない阿部政権にとっては盤石な布陣と言えるだろう」

 

○御用部屋
右側に、阿部、脇に牧野、下がって松平近直(45)、本田泰固(45)が鎮座。
左側に忠優、脇に乗全、下がって石河政平、井戸覚弘が鎮座している。
阿部「いよいよですな、忠優殿」
忠優「3年前のこと、昨日のことのようですな」
阿部「フフフ」
微笑み合う二人。
牧野「内外の課題が山積しております。ここにいらして頂いたのも、今後の幕政をどうしていくのか、ということを確認したかったからでありますが」
乗全「寺社奉行並びに大阪城代時代を見れば一目瞭然の通り、忠優殿の執政ぶりは雷神のごとき素早さ、これまでのとかく優柔不断と言われがちな政権評価を一変することができましょう。前大阪城代であるこのワシが保証しましょう」
政権批判され面白くない顔の牧野。
牧野「そうあってほしいものですな」
阿部・牧野派 vs 忠優・乗全派の図式。
阿部「今後の幕閣の運営方針ですが、忠優殿のご意見はいかがかな」
試すような目で忠優を見る阿部。
その眼を感じ、フッと口元が緩む忠優。
忠優「政治においては一にも二にもまずは財政を手中に収めねば始まらない。そこは阿部殿の懐刀、松平近直殿、そしてこの石河政平の二人の勘定奉行でがっちり押さえる」
『松平近直』
警戒心を解かない表情で見つめる近直。
かたや頷く石河。
忠優「内政は阿部殿と我が、外交においてはこれにいる長崎奉行・井戸覚弘、上様並びに大奥にはそちらの御側御用取次本田泰固、といったところが大きな幹になろうかと」
にやりとする阿部。
阿部「申し分ありません。あえて付け加えるならば、幹から延びる枝でしょうか。人材の登用は急がねばなりますまい。なにせ周りは動かない者、判断できない者がほとんど。きちんと我らの考えを理解する者を集める必要がありましょう」
忠優「これもまた反発が激しいでしょうな」
微笑み合う忠優と阿部。
警戒感を隠さない爺役の牧野と乗全。
緊張気味のその他の面々。
庭には紅葉が色づいている

 

 

 

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