開国の父 老中・松平忠固

【817】第2話 A1 『ペリーの決意』≫

○江戸湾口
突き進むペリー艦隊。
周辺に浮かぶ漁船を木の葉のように揺らしながら進んでいく。
漁船の漁師達は驚きながら巻き込まれないように櫓をこいでいる。
大島を右舷に、三浦半島東端の剣崎を左舷に見ながら江戸湾内に侵入している。
N「嘉永6年(西暦1853年)6月3日、マシュー・ペリー提督率いるアメリカ東インド艦隊4隻が日本に来航した。近年の頻発する異国船来襲、浦賀にも7年前にアメリカ東インド艦隊司令長官ビッドルがやってきたこともあり、異国船自体は珍しいことではなかった。しかし、日本最大の千石船・百トンに比べ、ペリー艦隊の蒸気船は二千トン以上、サスケハナ号に至っては二千四百五十トンものその大きさであり」

湾内に入ると、前方に見える無数の和船。
船の上で立ち尽くす役人達。
15人程度乗った役人の乗った御用船。
大きなマストに四角い帆を張った日本最大の千石船さえフェリーに対するボートのごとき大きさである。
和船の役人が口々に叫ぶ。
役人A「お、おい、帆も張ってないのに」
役人B「も、燃えているのか」
もうもうと吐かれている黒煙。
口を開けて呆然としている一同。
帆を張っていない蒸気船。
役人B「止まれー、止まらぬかー」
役人A「巻き込まれるぞ、退避、退避ー」
無視して突き進む黒船艦隊。
N「しかも、蒸気の力により自由に航行できる蒸気船を目の当たりにしたのは初めてであり、その黒い船体の容貌といい、日本人に衝撃を与えるのには十分すぎるものであった」
ペリーからの指示により、甲板は戦闘に備えてえ片付けられ、大砲は所定の位置に据えられ、装弾され、弾薬が配備され、小銃が準備され、歩哨と各員は自分の部署につき、開戦を前にして行われるすべての準備を整える。
前方には無数の和船。
沿岸には警戒している武士の軍勢。
岬には大砲。
浦賀の入り江の入り口で蒸気船の外輪が停止し、全艦碇を下ろす。
停泊する艦隊。
静まり返る湾内。
パイプをふかしたペリーの顔。
一触即発の状態。
そこにこだまする2発の発砲音。
一斉に銃を構えるペリー艦隊の水兵。
岬で2本の煙が上がっているのが見える。
ペリーが窓ごしに煙を見る。
ペリー「狼煙か・・・」
天気は晴れており富士山がくっきりと見えている。

 

○道
駆けていく早馬。

 

○海上
煙幕の煙。
「パンパン」という発表音。
霧が晴れると甲板に入ってきた忍者はいない。
水兵「お、あれを見ろ」
近づいてくる一艘の和船。
和船の役人が横文字が書かれた紙を提示している。
それらはフランス語で『艦隊は撤退すべし。危険を冒してここに停泊すべきでない』と書かれている。
和船に乗っているのは、中島三郎助(32)と堀達之助(30)。
中島「ここは貴国の船が寄港できるところではない。即刻退去されたし。即刻退去されたし。用があるなら長崎に回られたし」
甲板の船員たちががやがや話している。
英語で応答する船員。
船員「オーバーゼア。あの船に行け」
サスケハナを指さす水兵。
サスケハナに漕ぎ出し、船に横付けする中島らの船。
達之助が立ち上がり、
達之助「アイキャンスピークダッチ」
おおっとなる水兵たち。
達之助「アイキャンスピークダッチ」
サスケハナ甲板の水兵達、一人が船内に消え、通訳官ポートマンと副官であるコンティ大尉が顔を出す。
達之助がオランダ語で交渉し出す。
達之助「乗船を乞う。乗船を乞う」
ポートマン「乗船させることはできない。艦隊司令長官という役職は合衆国では最高位のものであり、長官はこの地の最高位の役人・総督とのみ協議するつもりである」
達之助、中島に
達之助「この地の最高位の役人、すなわち奉行としか会わんと言っております。どうします」
中島「・・・。やむをえまい、わしをこの地の副奉行だと言え」
達之助「え、ですが中島様は浦賀与力で・・・」
中島「一刻を争う。言え」
達之助の言葉を隣のコンティ大尉に通訳するポートマン。
ポートマン「船に乗っているのはこの地の副総督で、こちらも副総督に相当する地位の士官と協議をしたい、それであればできるはずだ、と」
コンティ「なるほど。それでは提督にご相談してこよう」
コンティ大尉がいなくなる。
しばらく出てこない。
中島・達之助「・・・」
待たされる二人。
周囲を囲む水兵達の視線。
二人の不安げな表情。

 

○ペリー提督室
イスに深く座っているペリー。
コンティに指示を出している。
ペリー「これまでは軍の慣例上やってくる人々を無差別に乗船させてきた。7年前の我が国東インド艦隊来航時などコロンブス号に一度に百人以上の日本人を乗せた。しかし外交上の成果は皆無だった。ビットル提督の二の舞を演じるわけにはいかん」
葉巻をぐりぐりと押さえつけて消す。
勢いよく立ち上がり、コンティに指示するペリー。
ペリー「今回、このサスケハナ以外には日本人を一人たりとも乗船させてはならん。旗艦に乗船させるのも地位の高い者、政府の使者のみとせよ。それも同時に3名までだ。これは全艦に徹底せよ、絶対だ」
コンティ「ラジャー」
敬礼するコンティ。
強い決意のペリー。

 

 

 

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