開国の父 老中・松平忠固

【819】第2話 A3 『大砲、発射さる』≫

○海岸(夜)
夕日がすでに落ち、あたりが暗くなっている。
海岸で船に乗ろうとしている象山とその一行。
象山「なに、この風だと船が出せんだと。この緊急事態、一刻も早く浦賀に行かねばならぬのだ。ええい、くそ」
歩き出す一行。

 

○江戸城・御用部屋(夜)
忠優をはじめ、井戸、川路、水野が集まっている。
忠優「おそらくクルシウスの申す通り、最新鋭の蒸気船、最新鋭の大砲だ。もし戦ったら一方的な殺戮となろう」
水野「や、やはり戦力の差はそれ程までにございますか」
うなずく忠優。
川路「西洋の大砲の射程距離については、崋山先生主催の尚歯会でもよく話題になりました。我が国の臼砲の3倍も4倍も遠くまで飛ぶ。4倍も遠くから大砲を撃たれてはそれは戦にはなりますまい」
水野「よ、四倍・・・」

川路「高島秋帆も同様のことを申しておりました。さらに言えば射程だけでなく、砲弾も全く違います。弾の中に火薬が詰められているガラナートやブラントコーゲル、ペクサンと呼ばれる榴弾は弾着と同時に確実に爆発し、一発で大勢の敵を倒すことができる、とのこと・・・」
水野「・・・」
井戸「着発榴弾の事は拙者も知っている。しかし長崎奉行時代も実物はお目にかかったことはござらん。武器の持ち込みは固く戒めてござったからな。こうなってみるとなぜ西洋の武器をオランダから持ち込ませ、研究しなかったのか、そうしておれば今頃は・・・」
水野「く、せっかく御前が浦賀奉行にして下さったのに、わずかひと月前に長崎奉行に転任が決まるとは。なんと口惜しい」
忠優「仕方あるまい。阿部殿は長崎にメリケン艦隊が来ると判断されたのだ。それに」
井戸と水野に
忠優「過去のことを悔やんでも始まらぬ。すべては今じゃ。今この瞬間に全力を傾ける、それしかないではないか、人の道とは」
水野「は、はい・・・」
腕組みをしていた忠優。
忠優「とにかくこちらから仕掛けてはならぬ。蛮社の弾圧もあり西洋の知識を持つ者はおろか興味を抱く者すら稀だ。血気盛んに飛び出す者もあろう。浦賀奉行は問題ないとしても、江戸湾警備の諸藩は大丈夫であろうか」
その時、ドーーンと大砲の音。
驚く一同。
川路「た、大砲の音」
井戸「それもあの音は和砲ではない、向こうの大砲じゃ」
忠優「水野!」
水野「はっ」
バッと立ち上がり駆けていく水野。
忠優「・・・」
空は満天の星空。

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

開国の父 老中・松平忠固

PAGE TOP

© 開国の父 老中・松平忠固史 2020 All Rights Reserved.