開国の父 老中・松平忠固

【821】第2話 B1 『象山、丘の上から』≫

○崖の上(朝)
降り注ぐ朝日。
海面がキラキラと輝いている。
松が生い茂り、湾を見下ろす小高い丘。
大勢の人たちが集まっている。
その中に武士の一団。
その視線の先には4隻の黒船。
周辺には木の葉のように小さな和船。
2隻はわずかに煙をあげている。
声「浦賀港口の東南16町に洋名コルベット一艘これあり。そこより東北にいわゆる蒸気船2艘、その外側にコルベットもう一艘見え候。コルベットの長さは25間、蒸気船はその倍近く40間ばかりある。蒸気船の船腹には車輪を備え、その大きさ径6,7間、煙突が径5尺にして船より3間高く突出している。乗員は合わせて2千人ばかりか」

黒船の様子。
乗組員の様子。
大砲の様子。
声「大砲の数は左のコルベットは合計24門、右は28門を備え左右に展開し、中央に蒸気船2艘、車輪の前に4門、後に2門、その上に6門、眼下の艦隊全体での合計で60門はある」
それを見ている望遠鏡。
メモと取っていた弟子の横で、望遠鏡をのぞいている男、顔をあげる。
佐久間象山である。
そこへ人をかき分けてくる男、吉田松陰。
松陰「せんせーい。象山先生ー」
象山「おう、寅、来たか」
松陰「あ、あれが異人共ですか、あれが蒸気船なるものですか」
象山「そうよ、わしも実物を見るのは初めてじゃ」
松陰「で、でかい、でかすぎる。わが国最大の千石船の10倍、いや20倍はある・・・」
象山「ああ、さすがのわしも度肝を抜かれたわ」
松陰「あの、あの巨大な鉄の塊が風もないのに、それも帆船よりも素早く動く・・・、そんなことが・・・」
象山「できるのよ、あれが証拠、われらの目の前で証明されている。目の前に突き詰められている。唐や天竺が蹂躙されるわけよ、きゃつらの、西洋の力はまさに桁違いよ」
黒船と陸地の砲台を指さす象山。
象山「見よ。きゃつらは陸地の砲台の射程外に陣取っている。我らの力を知った上でな。だがきゃつらからは届く。きゃつらにとっては十分な射程距離じゃ」
松陰「・・・」
象山「そんなことはこの日本でわしにしか分からぬがな」
松陰「・・・」
弟子「戦さになりますか。もし戦さになったら・・・」
周囲の弟子たちはみな、象山を見る。
象山「戦さになるかはまだ分からん。されどもし戦さになったら・・・」
かたずをのむ弟子たち。
少し間を置き
象山「百戦して百敗する」
弟子たち「・・・」
象山「だからだ、だからきゃつらに学び、きゃつらの技術を習得した上で、戦端を開く必要がある。我らが大砲を作り、黒船を作り出すにはどうしても時間が必要なのじゃ」
一同「・・・」
絶望的状況にうつむく一同。
そして黒船を見つめる。
弟子「先生!、黒船に役人が」
象山「なに」
あわてて望遠居を覗き込む象山。
象山「交渉を試みる・・・か?」

 

 

 

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