開国の父 老中・松平忠固

【844】第3話 C4 『それぞれの陣営にて』≫

○井伊家・茶室・外観
声「やったか」

 

○同・茶室内
直弼と長野主膳が茶をたてている。
長野「はい。伊賀が売国するといううわさ、早速問題となり、御老公が詰問、慶永ら大名を含めて全員から総攻撃を受けたとのこと」
直弼「おまえの戦略がいつもながら見事とはいえこうも見事にうまくいくとはな。案外わしもやつらを買いかぶりすぎていたかもしれん」
長野「たしかにそうですな。伊賀守が自ら火に油を注ぐような言動をした、とのことですから、動揺した挙句に我を忘れるような小物にございましょう」
直弼「うむ。とにかくこれで水戸と伊賀の亀裂は決定的になった。もう一息じゃな」
不敵に笑う直弼、優雅に茶を飲む。

 

○水戸家・応接間
斉昭、慶永、慶勝、宗城がいる。
慶永「それにしても伊賀守はひどいもんでござるな」
斉昭「もう奴の話はいいわ」
宗城「それはそうと、大船建造解禁が正式に決まったとのこと。それは親藩・譜代だけでなく、外様も対象でよろしいのか」
斉昭「ああ、実は外様を対象に入れるのも奴は反対しよった」
慶勝「ことごとく敵にまわりますな、伊賀は」
慶永「ともかく、外様も解禁になるということは、一刻もはやくあの方にもご報告をせねばなるまいな」

宗城「わしも首を長くして待っておったが、その報をこの日本国で一番待ち望んでいたのはあのお方であろう」
斉昭「ふん」
鼻で笑う斉昭。
はははと笑い合う一同。

 

○道場・外観
森の中の道場。
声「きえー」

 

○道場内
家臣の八木剛介(30)と柔術の稽古をしている忠優。
大男の八木を次々と投げ飛ばしている忠優。
縁側に座っている乗全、井戸、石河。
石河「そんなことがあったんですか」
乗全「く、こともあろうにこの乗全が非番の日にそのようなことになろうとは。一生の不覚」
井戸「・・・。おそらくそれがしが掃部守に口を滑らせたためにこんなことに・・・。なんたる未熟・・・」
乗全「今さら致し方あるまい。伊賀殿も言っておる、もうそれは言うな」
落ち込む井戸をなだめる乗全。
三人して忠優の稽古の様子を眺める。
声「うぉー」
忠優の豪快な一本背負いが決まる。
石河「ですが大船解禁ということになると、当然出てきましょうな、あの方が」
井戸「あの方?」
乗全「西国のあの方か。それも忠優殿は憂慮しておった。御老公の海防参与就任と共に。いや、御老公よりもむしろそちらの方を気にしておった。内なる脅威、幕政が根底から覆される危険、とまでおっしゃっておった」
石河「それほどまでに・・・」
井戸「内なる脅威・・・」
乗全「・・・。そろそろ来るであろうな、この江戸に」
空を見上げる三人。
青い空。

 

 

 

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