開国の父 老中・松平忠固

【843】第3話 C3 『孤立無援』≫

○江戸城・外観

 

○同・廊下
忠優が廊下を歩いている。
すれ違う大名たちの冷たい視線。
ひそひそ話をしている者。
忠優「?」
気にせず歩く忠優。

 

○同・大広間
阿部ら老中陣、斉昭や斉昭派の慶永・徳川慶勝・伊達宗城ら大名勢もいる。
がやがやと話し声がうるさい。
忠優が入ってくるや話し声がピタッと止まる。
忠優に集中する視線。
忠優「・・・」
なんだ?という表情。
上座に歩いていくがその際も冷たい目線が注がれ続ける。
老中の定位置に座る忠優。
阿部「それでは全員そろったので、御親藩はじめ近しい方々に閣議決定のご報告を申し上げますが・・・」
斉昭「ちょっと待った」
斉昭の憤まんやるかたない顔。
斉昭「実に不快な話を聞いた。まずその真意を確認したい」
阿部「御老公」
たしなめようとする阿部。
斉昭「いや、報告する決定事項やこれから決めようとすることの前提さえ覆す重大なことだ。今すぐここで確認する」
忠優をにらむ斉昭。
斉昭「伊賀」
無表情に斉昭を見る忠優。
斉昭「そこもとは嘘つきの小悪人か、それとも国を売る大悪人か」

忠優「何の話でござる」
斉昭「知らぬは本人ばかりなり、か。今城内はその話で持ち切りだ。実は伊賀守は口では『交戦する、交戦する』と言っておるが、その実メリケンと結び国を売り渡す算段をしておる、とな」
忠優「・・・」
わずかに表情を変える忠優。
斉昭「ワシに賛同して攘夷を断行するとは嘘か、逆にメリケンと結んで国を売り渡す気なのか」
忠優「・・・」
見かねた阿部。
阿部「忠優殿には深い考えがあり、それは」
斉昭「伊勢は黙っておれ。伊賀に聞いておる」
静まり返る場。
その場の全員の視線が忠優に注がれる。
忠優「交戦する意思というのは嘘ではない。それに国を売り渡す等とは毛頭思っておらぬ」
ふーっと一気に緊張がゆるむ場。
阿部も大きく安堵する。
忠優「だがメリケン国と結ぶというところは間違っておらぬ」
阿部「忠優殿、それは・・・」
大きくどよめく場。
斉昭「どういうことだ」
阿部「御老公、いたずらにご政道を混乱させてはなりませぬ。ここは幕閣の閣議ではござらぬ。諸大名はじめ上席の役人も列席しております。その話はまたあらためて」
斉昭「いや、逆にこの場ですぐ真偽を確かめた方がよい。その方がご政道の為じゃ。いかに、伊賀」
忠優「・・・」
阿部「忠優殿、この場は・・・」
忠優「・・・」
目をつぶり意を決する忠優。
忠優「交戦するのはあくまで西洋諸国との力を差を隅々まで知れ渡らせるため。そしてその差を埋めるためにメリケンと結び、交易によって力の差を縮める」
顔を真っ赤にする斉昭。
大きくどよめく場。
斉昭「何を言っておるのだーーー」
慶永「戦わずして初めから負ける算段とは」
慶勝「何たる軟弱、何たる怠惰」
宗城「信じられぬ発言じゃ」
不満が充満する。
実務官僚の堀・永井・岩瀬もいる。
堀「では伊賀様は何の為に台場の建設を命じておられるのか。私は初めから負けるつもりで台場を作っているのか」
岩瀬「・・・」
怒号が飛び交う場。
『それを国を売り渡すと言わずして何を言うのじゃ』『やむを得ずというならともかく、進んで夷狄と結ぶなどなんと恥知らずな』などの発言。
忠優、黙して聞いている。
阿部も諦めて放置している。
斉昭「もはや、この場の空気を吸うのも不快じゃ」
席を立つ斉昭、すたすた出ていく。
それを見て慶永
慶永「御老公」
後を追って出ていく。
一緒に慶勝と宗城も続く。
続いて他の大名、堀ら役人も出ていく。
岩瀬「・・・」
出ていく岩瀬、ちらりと忠優を見る。
残された老中陣、忠優、阿部、牧野。
牧野「では私も行きますぞ」
牧野、阿部に一声かけて退出。
残された阿部と忠優。
ちらりと忠優を確認する阿部。
忠優、さすがに思い詰めた表情。
阿部「・・・」
何か声をかけようとするができずに、一礼して去る阿部。
一人残された忠優。
忠優「・・・」

 

 

 

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