開国の父 老中・松平忠固

【891】第6話 C3 『切腹』≫

○間宮海峡
ロシア船1隻が3隻の船に追われている。
3隻はイギリス国旗を掲げている。

 

○イギリス艦・艦橋
副官が司令官に報告している。
副官「前方の国籍不明の艦船は停船命令に従わず逃亡を図っております」
司令官「ロシア艦だな。追いつめて補足するぞ」
副官「この先はタタール湾、行き止まりですので袋の鼠です」

 

○ロシア艦・艦橋
副官がネヴェリスコイに報告。
副官「イギリス艦、追ってきません」
ネヴェリスコイ「ふん。奴らはサハリンは半島、ここタタールは湾だと思っているのだ。追っては来まい」

 

○海上
イギリス艦隊は追ってこない。

 

○ロシア艦・艦橋
望遠鏡で陸地を見ている副官。
副官「司令、陸地の集団の中に日本の侍がいます」
ネヴェリスコイ「なんだと」
望遠鏡を受け取り眺める。
ネヴェリスコイ「・・・」
副官「侍がこんなところまで。やはりサハリンの領有は無理があるのでは」
ネヴェリスコイ、激怒する。
ネヴェリスコイ「馬鹿者、どいつもこいつも何を未開の原住民を恐れている。クルーゼンシュタインのバカが『サハリンは半島だ』などというから日本人がここを間宮海峡などと命名するのだ。ここは間宮海峡などではない。初めてここを船で通過したこのオレ、オレ様の名を関したネヴェリスコイ海峡だ。何が『日本人の勝ちだ』だ、何が『日本海』だ、クルーゼンシュタインの馬鹿者が」
もう一度望遠鏡を見る。
ネヴェリスコイ「あいつらめ、捕虜にしてやるか」
副官「言うまでもなくそんな時間は・・・」
ネヴェリスコイ「ふん」
望遠鏡を副官に投げつける。

 

○函館
美しい函館の街。
『函館』
高台から一望の景色。
沖にロシア船が停泊している。

 

○函館奉行所・外観
声「なにー」

 

○同・執務室
部屋からロシア船を眺める堀。
堀「アニワでの交渉をすっぽかしたくせに、この俺の方から船に来いだと」
事務の平山。
平山「はい」
堀「ふざけるな。おまえらが上陸して挨拶するのが礼儀だろう。そちらがこっちに来いと言え」
平山「それが・・・、向こうは上陸しないと」
堀「おのれぇ、やはりこのオレをなめおって。俺は断じて言いなりにはならん。向こうが折れるまではな」
平山「ですが、それならばすぐに出向して江戸に向かう、とのことです。それこそ一大事です」
堀「くっ、そうなったらもはや・・・」
心配そうに堀を見つめる平山。

 

○ディアナ号・執務室
プチャーチンと副官ポシュート、通訳が平山と会談している。
平山「プチャーチン殿、何とか折れてもらえませぬか。函館奉行の性格上、このままあなた方が上陸せず江戸に向かってしまったら、おそらく彼は切腹するでしょう」
プチャーチン「切腹?」
平山「自分で自分の腹を切り、責任を取るのです」
プチャーチン「自分で自分の腹を・・・?、自殺するのか」
ポシュート「ク、クレイジー・・・」
平山「我が国の侍とはそういうものなのです。もし彼が切腹したとしましょう。そうなれば日本の武士全体がプチャーチン提督に対し、そしてロシアに対し、攻撃的な意志を爆発させるかもしれません。そんなことにならないようぜひ、プチャーチン提督には善処して頂きたいのです」
顔を見合わせるプチャーチンとポシュート。

 

 

 

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