開国の父 老中・松平忠固

【892】第6話 C4 『音吉』≫

○長崎奉行公邸・門
英国一行が門を入っていく。
音吉の緊張した表情。
音吉「・・・」

 

○長崎奉行公邸・応接室
水野と永井が座っている。
相対する英国一行。
どちらとも口を開かない。
音吉、ちらりとスターリングを見る。
スターリングは相手の出方を見てやる、という態度でふんぞり返っている。
音吉、しびれを切らしてスターリングに何か話しかけるが、手で追い払われる。
音吉「・・・」
永井が水野に耳打ち、水野頷く。
水野、いきなり話し始める。

水野「条約の内容であるが、我が国は貴国に対し、ここ長崎と北方の函館を開港し、薪水・食糧他必要な物資を提供する用意がある。またこれより後、他の国へ両港以外の港を供する場合は貴国にも同様に取り扱うように計らう」
英国一行、きょとんとしている。
音吉、驚いている。
スターリング、音吉に『何をしている、早く訳せ』と促す。
音吉、水野に
音吉「じ、条約ですか・・・」
水野「そうだ」
音吉「・・・」
音吉、戸惑いながら、スターリングらにその内容を話す。
副官が地図を差し出しながら指で函館を指している。
スターリング「・・・」
副官に『日本は条約を結ぶと言っているぞ、いいのか』とか言っている。
副官も考え込んでいる。
スターリング、副官に耳打ち。
頷く副官。
にやりとするスターリング。
スターリング「よろしい。それで条約を結んでやる」
音吉、また驚く。
音吉「結構です。条約を結びましょう」
水野、永井、険しい顔が少しほころびほっとした表情。
音吉「・・・」
納得いかない表情の音吉。

 

○同・控室
水野、永井と音吉が話している。
音吉「なぜです。なぜこうもあっさりと決まるのです。まだ初交渉から5日しかたってませんよ。そんなすぐ決まるなんてあり得ない。それに、条約ですと?我々は日本中の港を使わせろとは言いましたが、条約を締結しろなどとは言っていません」
水野と永井、不思議そうな顔。
音吉「英国の軍備に恐れをなしたのですか。いつそんなに腑抜けになったのです」
怒りを爆発させる音吉。
永井「何をそんなに興奮しておる。両国が合意に至ったのだからよいではないか」
音吉「違う、違う。私の知っている日本はそんな話の分かる国じゃない。やはり英国の軍備に恐れをなしたのだ、この国は腰抜けになっってしまったのだ」
はぁはぁ息を切らす音吉。
音吉「私は砲撃されたのですぞ、帰りたくても帰れなかったのですぞ。それを・・・、なんで・・・。ううっ」
涙ぐむ音吉。
水野、席を立ち、ゆっくり音吉の方に近づく。
冷たい表情の水野。
斬られると身構える音吉。
少し離れた所で止まる水野。
涙を流しながら、水野を睨む音吉。
音吉「・・・」
水野「帰ってこないか・・・音吉」
音吉「!!」
驚き目をぱちくりする音吉。
音吉「え?」
水野「今は昔と違う。もはやモリソン号の時でもマリナー号の時でもない。帰っても罰せられることはない。日本に帰ってこい」
唖然とする音吉。
水野「お前の力を借りたい。ジョン万次郎のようにそのエゲレス語の力、その知識を母国の為に使ってみないか」
唖然としていた音吉。
ぶわーっと涙があふれ出し、水野に駆け寄って平伏する。
水野、しゃがみ込み、音吉の目線で音吉の背中に手をかける。
水野「おぬしも大変だったな」
音吉、うわーっと号泣。
永井「・・・」
同じく低い姿勢の永井ももらい泣き。

 

 

 

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