開国の父 老中・松平忠固

【939】第9話 C3 『直弼、京都工作』≫

○井伊邸(夜)
直弼が長野、脇坂と密談している。
直弼「なにぃ、袖の下を返してきただと」
脇坂「はい」
直弼「三千両全てか」
脇坂、困惑した顔で頷く。
直弼「ぐぬぬ。なんという無礼な。くそっ。あやつは以前に増してやりにくいわ」
脇坂「加えて、我々の後から越前慶永様が接触し、金子を送ったとの情報が。それも奴らは我らよりも多い五千両を送ったとのこと」
直弼「むぅ。で、受け取ったのか」
脇坂「そのようです」
直弼、扇子をばきっと折る。
直弼「なんたる厚顔、無節操。あれほど対立しておった水戸側から金だけは受け取ったというのか」

脇坂「全くです。伊賀様は御老公とは犬猿の仲。まさか一橋派に寝返ろうとは到底思えませぬが。にしても聞きしに勝る金の亡者ですな」
直弼「奴の上田藩の財政は火の車とは聞いておるが・・・」
ろうそくの火が揺れる。
直弼「まぁよい。いずれにしろ上様も含めて現状ではどうにもならん。次の上様、慶福様が次の上様になりさえすれば、如何様にもなるのだ。そのために寝かせてきたことをついに使う時がきたか」
脇坂「寝かせてきたこと?」
直弼「ふふ、主膳」
説明する様あごで長野に指示する直弼。
長野「我が井伊家・彦根藩はペルリ来航時、内海防備を担わされていたのはご存じですか」
脇坂「うむ」
直弼「阿部伊勢守の謀略でな、であるのであの忌々しい伊勢守を・・・」
長野「殿」
長野が直弼を制し、慌てて口をふさぐ直弼。
長野「ごほん。ですが、わが彦根藩が本来警護すべき土地とはどこでしょうか」
脇坂「それは誰もが知っておりまする。徳川四天王・ご藩祖であられる井伊直政様以来、そのお役目は京都警護。あっ・・・」
長野「そうです。京こそ井伊家の庭。如何様にも操れる。『京に伺いを立てる』という方向に持っていけばよいのです。将軍継嗣にしろ、条約締結にしろ。そうすれば後は京を使って我らが意を反映できます」
脇坂「な、なるほど。わ、私は御老公がしきりに縁者である鷹司家とやり取りしている為に、この話が起きたのかと・・・」
直弼「猿回しの猿とも気付かず踊っておる。ふふふ。抜かりはない。関白職は去年、鷹司家から九条家に代えておる。九条家こそ我が井伊家とゆかりの深いお家」
脇坂「か、感服してござります」
平伏する脇坂。
不敵な笑みの直弼と長野。

 

 

 

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