開国の父 老中・松平忠固

【951】第10話 B3 『そろばん』≫

○蕃書調所・内
岩瀬、井上がハリス、ヒュースケンと交渉している。
岩瀬「次に、最大の焦点である関税であるが、輸入税・輸出税ともに一割二分五厘でいかがか」
ハリス「輸出には通常関税は掛けませぬぞ。輸出に関税をかけるということは、日本国民の産業に重荷を課し、商人にとっても迷惑で、密貿易の取り締まりに多大な経費を要し、国家の収入に益することがありませぬ」
岩瀬、迷いなく
岩瀬「輸出税を掛けないとするならばそれに見合う財源を確保する必要がある。輸入税を上澄みせねばなるまい。2割でどうか」
ヒュースケンと話すハリス。
ハリス「20%・・・」
岩瀬「一般品目は2割とする、ただし、ハリス殿が求めるように食料・建材・漁具など一部品目については五分程度にしてよい」
ヒュースケンがハリスに
ヒュースケン「税率20%は欧米諸国と同レベルの関税率になりますが」
考えているハリス。
そろばんはないが、そろばんをはじいている動作をしている井上。
岩瀬に指示を出す。
岩瀬「食品を五分にする一方、酒類は高くしたい。三割五分でいかがか」
ハリス、ヒュースケンと相談。
ハリス「ところで、井上殿は何をやっているのか」
井上の手真似をしながら
井上「そろばんでござる」
後ろの筆記人からそろばんを出す。
ハリス「これで計算を・・・。この道具がなくてできるのか」
井上「はい」
ヒュースケンが口笛を吹く。
ヒュースケン「マジシャンか、お主らは」
難しい交渉の中に笑いが漏れる。

 

○水戸藩邸・外観
声「何をやっとるか」

 

○同・応接間
川路と永井が平伏している。
斉昭が二人をなじっている。
斉昭「メリケンとの通商条約交渉が決着まじかだと。そんなことが許されると思っているのか」
川路は慣れてるので涼しい顔。
永井は初対面なので、脂汗を流している。
斉昭「そうやって我が神国を交易の面から汚染しようとしておるのだ。お主らはまんまとそれに乗せられておる、愚か者だとなじるだけで済む問題ではない。責任を取れ」
永井「・・・」
永井、切腹が頭によぎり、全身が緊張し今にも腹を斬ろうかという構え。
それを感じ取った川路、永井の膝をがしっとつかむ。
永井、我に返る。
川路、永井に対し首を振る。
永井「・・・」
斉昭「ハリスなどという使いはぶった斬ればよい。そうすればすぐに解決するではないか。そして、それを進める伊賀と備中は切腹じゃ。あやつらが元凶。切腹を言い渡す」
永井「・・・」
川路「かしこまりました。ご老公のおっしゃりよう、しかと堀田様、伊賀様にお伝え致します。しかしながら堀田首座殿自ら勅許を頂きに京に参るのです。勅許さえ降りればよろしゅうございますな」
斉昭「うむ。無論じゃ」
満足げな斉昭。

 

○溜間
上座に直弼が座っている。
平伏している岩瀬。
直弼「通商交渉はどうなっている。説明せよ」
顔を上げる岩瀬。
答えない。
直弼「どうした、はようせい」
岩瀬、手前のおつきに向かって直弼には聞こえないような小声で話す。
直弼「む」
御付「手前は身分の低きものゆえ、直接お話しすることができません、と言っています」
直弼「なんだと」
岩瀬をにらむ直弼。
岩瀬もその凝視をしっかりと受け止める。
そしてにやりと笑う。
直弼「!」
かーっとなって、そのまま出ていく直弼。
平伏し、岩瀬も出ていく。
してやったりの岩瀬。

 

 

 

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