開国の父 老中・松平忠固

【969】第11話 C1 『日米修好通商条約締結』≫

○江戸城・外観
『安政5年(西暦1858年)6月19日』

 

○同・評定の間
忠固・堀田をはじめとする老中陣、岩瀬・井上をはじめとする下級役人、上座に大老の直弼が座っている。
井上が報告している。
井上「一昨日の6月17日、ハリスがポーハタン号にて横浜沖に来航。文書にて正式に申し入れを行っています」
文書を読む直弼。
井上「昨年来エゲレス・フランス両国は清国に対し攻撃を加え、広州を占領し天津を制圧しました。そしてその結果結ばされたのがこの天津条約です」
岩瀬「賠償金はエゲレスに対し400万両、フランスに対して200万両」
ざわつく一同。
『よ、400万…』『合わせて600万両ではないか』などの声。
岩瀬「さらに、南京をはじめ計10港の開港。アヘンの輸入公認、交易における関税率の撤廃。キリスト教の布教と支那における旅行のフリー、等です」
直弼「フリーとは何か」
岩瀬「好きにしてよい、天下御免である、ということです」
直弼「・・・」
冷や汗をたらす直弼。
『10港の開港・・・』『それよりアヘンじゃ、問題は』『いや、邪教の布教が最も深刻』などの声。
井上「エゲレス・フランスはこの勢いを以て日本にやってくる、ハリスはそう言っております。オランダ・カピタンに確認したところそれは間違いないとの返事」
久世「日本にやって来る・・・。だが我が国がきゃつらを軍備で退けるは不可能。となれば唐の国と同じように・・・」
静まり返る場。
目を閉じていた忠固、目を見開き、満を持して口を開く。
忠固「もはや機は来た。今こそ条約を締結する。今ならこちらの条件で条約を締結できる、関税もかけられ利益も得られるのだ。逆に、この機を逃せば、清国のような条件、関税なき奴隷のような条約となろう」

がやがやとなる場。
『奴隷のような・・・』『それより異人が好き勝手に入ってくるなど想像しただけでも・・・』『どうするか』『そうだな、それしかない』『今結ぶべし』『そうだそうだ』などの声。
堀田「・・・」
うつむきかげんの堀田。
直弼「ちっ」
落ち着きがない直弼。
久世「だが、条約締結日は7月27日と決まっている。それをこちらの都合で動かすことなど難しいだろう」
岩瀬「それは全く問題ありません。一刻も早く調印したがっているのはむしろメリケンの方です」
岩瀬が発言していることが気に食わない直弼。
岩瀬「エゲレス・フランスがやってきてからでは、メリケンももはや手遅れだと言っております。どちらが我が国にとって有益か火を見るより明らかでしょう」
一同「・・・」
シーンとなる場。
みな、直弼の方を見る。
直弼の言葉を待つ一同。
その静寂を破るように
直弼「だが、まだ勅許を得ていない。勅許を得てからではないと・・・」
忠固「御大老!!」
睨みつける忠固。
それには、大老にする時に勅許など気にしないという約束だったではないか、という強い気持ちが込められている。
直弼「・・・」
忠固「政に参加されたばかりの御大老に申し上げよう。大権現家康公が幕府開闢以来、この国の政務をつかさどってきたのは公儀である。公儀が決め上様がご承認するのだ。そこに京など微塵も介在しない。二百年そうだ。4年前の日米和親条約もそうだ。必要がないが帝には1年半後に報告し、ねぎらいの言葉も頂いている。その時を知っている者は私の他は久世殿しかおらぬが、そうであろう、久世殿」
久世「確かに。間違いない」
直弼「・・・」
忠固「ペリー初来航当時、海外の情報を把握しておきながら対応が後手後手に回った。何とかやり過ごしながら異国に対するために、海防掛、蕃書調所、講武所、海軍伝習所など整備を進めてきた。さりとていまだ異国に対抗する力はない。しかし後手に回らない状態まで持ってきたのだ、先の手を打てる機が到来しているのだ。この機を見極める眼力、それを断行する勇気こそ、今この場でもっとも大事なことであろう」
『おお、やろう』『やるしかない』など歓声が上がる。
久世「御大老、よろしいですね」
脇坂「・・・」
不安そうな脇坂。
苦虫をかみつぶしたような直弼。
直弼「・・・、できるだけ調印を引き伸ばすよう尽力・・・」
井上「いたしますが」
井上、直弼の言葉を遮るように
井上「やむを得ない場合はよろしいか」
直弼「・・・」
苦渋の直弼。
直弼「その際は致し方ないが、くれぐれも・・・」
井上・岩瀬「承知」
『ようし、やるぞ』『これから大変ですな』などざわつく。
ニヤリとなる忠固。
井上・岩瀬、忠固の方を向き、頷く。

 

○ポーハタン号(夕)
夕日に照らされるポーハタン号。

 

○ポーハタン号・艦内
ハリスと岩瀬・井上が向かい合って座っている。
双方書類を交換している。
岩瀬から手を差し伸べる。
ハリス、嬉しそうに岩瀬の手を握り返す。
続いて井上と握手。
周りでは拍手が起こっている。
T『安政五年(1858年)6月19日 日米修好通商条約締結』

 

○江戸城・評定の間(夜)
使者から報告を受けている。
歓声が上がっている一同。
満月を見ながら満足感でいっぱいの忠固、阿部の刀を月に捧げる。

 

○井伊邸・廊下(夜)
バタンと襖を開ける直弼。
直弼「主膳、主膳はどこかー」
襖を次々と開け広げながら進む。
直弼「なんとか、なんとかせい、主膳ー」

 

 

 

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