開国の父 老中・松平忠固

【970】第11話 C2 『晴天の霹靂』≫

○江戸城・大手門
『安政5年(西暦1858年)6月20日』
忠固が門から通路を歩き、玄関に入る。

 

○同・入口
茶坊主が迎える。
茶坊主「公方様よりご内意がございます」
廊下を進む忠固。

 

○江戸城・庭
庭で盆栽を切っている家定。
突然胸を押さえて苦しがり、ばたっとうずくまる。
女官たちが気が付き、騒ぎ出す。
女官A「う、上様」
女官B「だ、誰か、誰かある」

 

○同・将軍謁見の間
誰もいない将軍が座る一段高い上座。
下座にて座って家定を待つ忠固。
ぽつぽつと雨が降り出す。

 

○同・将軍の間
床に伏している家定。
周囲には奥医師が集まっている。
奥医師「う、上様」
家定、周りを見回し石河を見つける。
家定「い、石河と二人だけにしろ」
一同の目が石河に向く。
奥医師「上様、我ら奥医師が側にいなくては」
家定「余の命じゃ。さがれ」
すごすごと一同、部屋を出ていく。
二人きりになる家定と石河。
石河「う、上様・・・」
家定「や、やはり毒だったな」
石河、頭を畳に擦り付け、
石河「も、申し訳ございませぬ。私が命に代えてもお守りせねばならぬところを」
家定「お主のせいではない。こうなる事は余の宿命だろう」
石河「う、上様…」

 

○慶永邸
直弼が部屋に入っていく。
部屋の中で待っているのは慶永。

 

○同・将軍謁見の間
雨がザーザーと激しくなってくる。
その様子を何気なく見やる忠固。

 

○同・将軍の間
家定、指を震わせながら、床の間の掛け軸を指さす。
石河「じ、軸にござりますか」
柿が書かれた軸。
石河が手元に持ってくる。
家定「余はおそらく後世には暗愚でうつけな将軍として名を残す事になろう」
石河「そ、そんな事はありませぬ」
家定「その軸を残してくれ。その柿図が余が生きた証だ」
石河「?」
家定「余が書いたものだ」
石河「!」
まじまじと絵を見つめる石河。
にこっと微笑む家定。
石河もそれを見て微笑む。
家定「じ、条約はどうなった」
石河「日米修好通商条約は、無事締結致しました」
家定「そうか…」
家定、にやりとした後、ガクッとまた意識不明になる。
石河「う、上様、上様。奥医師をこれへ」
バタバタっと医師たちが入ってくる。
後ろに追いやられる石河。
手には握りしめられる掛け軸。

 

○同(夕)
雨と日暮れで既に薄暗くなっている。
目を閉じ、瞑想している忠固。
その時、ばっと上座のふすまが開く。
平伏する忠固。
顔をあげると、出てきたのは家定ではない。
忠固「・・・」
使いの者が懐から書状を取り出し、叫ぶ。
使い「上意である」
書状の表紙に上意と書かれている。
平伏する忠固。
使い「老中・松平伊賀守忠固に重罪の嫌疑あり、これを吟味するゆえ、その間貴殿を登城停止にいたす。登城停止は明日より適用とする」
忠固「な・・・」
口上が終わると同時に、ゴーンゴーンと就業時間終了の鐘の音。
忠固「ま、待たれよ」
使い「終業の刻限にてこれにて」
使いの者、さっさと退室していく。
忠固「・・・」
残された忠固。
呆然の表情。

 

 

 

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