開国の父 老中・松平忠固

【978】第12話 A2 『島津斉彬、倒れる』≫

○御用部屋
大老直弼を始めとする老中陣、乗全、脇坂、新老中の太田資始、間部詮勝。
乗全「エゲレスがついに来ましたな。いったいどのようになさるおつもりですかな」
嫌味を言う乗全。
脇坂「なんという他人事の言い草。あなたも幕閣である以上、一蓮托生でございまするぞ」
乗全、鼻で笑う。
乗全「わしはいつでも責任をとる準備はできておる。だが、覚悟が必要なのはここにいる全員なのではござらんか。やはり御三家・御家門を処分している場合ではなかったですな。われら譜代だけではどうにもなりませぬぞ」
脇坂「くっ」
『太田資始』
太田「乗全殿、そのくらいにされよ。上様もなくなり、我らが争っていたら公儀は崩壊してしまうぞ」
『間部詮勝』
間部「井伊大老、どのように致しましょう」
直弼、険しい顔。
直弼「・・・」
鋭い顔で直弼を睨む乗全。
乗全「まぁ、幸か不幸か8日の5人の外国奉行就任人事はそのままでしたからな。あの5人に一任すれば何とかしてくれるかもしれぬ。だが、うまく進めたとしても、それはこの首脳陣にとっては『不幸』となるかもしれませんがな。はっはっは」
直弼、苦々しい顔で乗全をにらむ。

 

○鹿児島・全景
噴煙を上げる桜島。
砲撃演習をしている薩摩藩。
馬上で指揮をしている斉彬。
腹を押さえて苦しみ出す。
そのまま馬上で倒れこむ斉彬。
藩士「と、殿!」
大騒ぎになる薩摩軍。

 

○某屋敷(夕)
薄暗い部屋で三人の人物が密談している。
男1「そうか、やったか」
男2「軍事演習中に倒れられてそのまま病床に。起き上がることもままならぬ状態だとか」
男1「まったく。軍事的装備をして上府するとは常軌を逸しておる。あやつは頭がふれておかしくなった、それで皆納得しよう」
女「全くです。このままでは島津家がお取りつぶしの憂き目に合う所でしたから。間一髪で間に合ったとはいえ、まだ油断はできませぬ。呪術では効ききらぬ覇気をあの方は備えておられますゆえ」
男1「うむ。今度は抜かりはない。そうとなるとワシもまた忙しくなるな」

 

○本郷邸・外観(夜)
表門は固く閉ざされている。
裏門からひそひそが入る男二人。

 

○同・アプローチ(夜)
庭までの飛び石の道が続いている。
石灯篭には明かりがついている。
顔を隠していた被り物を取ると、石河であった。
本郷が石河を迎えている。
本郷「石河様、申し訳ございません。危ない目に合わせてしまい」
石河「何をしても平気だ。真相を暴く為ならばな」

 

○同・庭(夜)
庭に片膝をついて控える庶民の格好をした忍者。
本郷と石河が報告を聞いている。
本郷「やはり毒か」
忍び「おそらく間違いないかと」
石河「くっ」
感情あらわにする石河。
石河「奥医師どもはいかがしたのだ。毒ならばなぜ分からぬ」
忍び「まだ、確証はつかめませんが、その毒は沢手米、すなわち水に濡れ損じた年貢米、それも海水に濡れた米から生えるカビから作られた、という話を耳にしました。その毒の症状は、脚気と同じようなものだとか・・・」
石河「確かに奥医師どもは4人全員脚気だと見立てていた。脚気衝心だと。ただ蘭方医・戸塚静海、伊藤玄朴、漢方医・青木春岱は治癒すると見立てたのに対し、脚気専門医の遠山澄庵のみが一両日中の命だと言っていた・・・」
本郷「普通の脚気でも慢性化して心の臓に患いを起こす場合はたしかにある。だが、急激に悪化し死亡するのはまれだ」
忍び「はい。この毒の衝心脚気は、麻痺を起こして三日くらいの苦悶のうちに死んでしまうものとのこと・・・」
石河、握りこぶし。
思わず立ち上がり
石河「おのれ。我らを陥れおって。暗殺の首謀者が水戸御老公であるはずがなかろう。次期将軍に慶喜公をお選びにならなかった腹いせなどと。くそっ」
本郷「上様がいなくなることで最も利益を得る者。今利益を得ている者を見れば一目瞭然」
石河「よくも・・・、よくも上様を。必ず証拠を見つけて白日の下にさらしてやる」
本郷「・・・」
少し石河が心配げな本郷。

 

○同・塀外
バッと降下してくる忍び。
暗闇の中に消える。

 

 

 

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