開国の父 老中・松平忠固

【979】第12話 A3 『5人の外国奉行』≫

○品川・東禅寺・外観
陰幕が張られ雅な装飾がされた応接所。
『7月13日』

 

○同・内
西洋式のテーブルとイスが用意され、真っ白のクロスが敷かれている。
入室してくるイギリス一行。
英国一行、その西洋スタイルに驚く。
エルギン卿「こ、これは・・・」
水野が手を差し伸べる。
水野「ハウドゥユードゥ。マイネームイズ、タダノリ・ミズノ。ナイスツゥミーチュウ」
エルギン卿「お、おお」
戸惑いながら握手するエルギン卿。
水野「エルギン卿でいらっしゃいますか。ボウリング卿が来日すると聞いてましたが。それに艦数は4隻だけですか?」
エルギン卿に説明するオリファント。
オリファント「日本側はボウリング卿が来る予定だったのを知っていました。艦数ももっと多かったはずだと言っています。まさかこちらの状況をここまで分かっているとは」
エルギン卿、対抗しようとする。
エルギン卿「北京には20隻以上の艦隊で襲来した。江戸にも呼ぼうと思えばすぐに何十隻も集めることができる」
5人、クルシウスやハリスらとの交渉でブラフには慣れているので、表情を変えない。
岩瀬が、扇子にスラスラと横文字を描く。
それを5枚、エルギン卿に渡す。
岩瀬「我らですが、左から、永井玄蕃、井上信濃、水野筑後、岩瀬肥後、堀織部です」
オリファント「貴殿は英語ができるのか」
岩瀬「話すことはまだ苦手ですが書くことはできます。オランダ語の方が得意です。もっとも、少し前まではアルファベットを見たこともありませんでしたが」
オリファント「そんな短時間に・・・。グレート」

岩瀬に感心するオリファント。
エルギン卿「それにしてもこの人数、日本側の人数は多すぎるのではないか。後ろの役人を数えてみれば我らの5倍はいるぞ」
イギリス側4人に対し、日本側は書記など20人ほどがいる。
永井「世界最大の大英帝国の要人をお迎えしているのです。貴殿一人に対して日本人は5人でようやく均衡がとれましょう。こちらはそれだけの厚遇を以てお迎えをしている、と理解して下さい」
エルギン卿「ふむ」
エルギン卿、悪い気がしない。
永井「それではお食事の用意を」
永井が合図をすると、料理が運ばれてくる。
ハムやシャンパン、西洋料理の数々。
エルギン卿「ほう、これはなかなかの料理だ。まさかこんな極東の地でこのようなもてなしを受けるとはな。これは愉快だ。はっはっは」
エルギン卿が和んだので一安心する5人。

 

○京都・全景

 

○近衛邸・外観

 

○同・応接間
西郷と月照、近衛が密談している。
そこへ入ってくる老女・村岡。
立ちすくんでいる。
近衛「どうした、村岡。何を立ちすくんでおる?」
西郷「?」
顔面蒼白の村岡。
村岡「な、斉彬さんが・・・」
西郷「え?」
村岡「島津の斉彬さんが・・・、お亡くなりになりました」
西郷「!!」
近衛「なんと」
月照「ええ!?」
近衛「なんと申した、もう一度言ってみよ」
村岡「斉彬さんがなくなってしまいました。おおお」
一気に泣き崩れ倒れこむ村岡。
西郷「と、殿が??何をおっしゃっているのです、村岡殿。殿はいま鹿児島にて武力上府の準備に忙しく・・・」
号泣する村岡を抱きかかえる月照。
月照「何かの間違えではないのか。斉彬さんはあんなに元気であらせられたではないか」
むせび泣きながら
村岡「軍事演習中に倒れられて・・・、わずか一週間の間に」
呆然とする西郷。
立ち上がりよろよろと村岡の元に近づく。
西郷「・・・、ま、まさか。そんなばかな・・・。い、いつのことです?」
西郷、村岡に掴みかかる。
村岡「15日に亡くなったとか、い、痛い」
月照「西郷さん、お、落ち着いて」
西郷を村岡から引き離す月照。
よろよろと縁側に進む西郷。
近衛「え、えらいことになってしもうたの」
縁側から空を見つめる西郷。
西郷「と、殿ーーーーー!!」

 

 

 

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