開国の父 老中・松平忠固

【986】第12話 C2 『屏風の水野』≫

○芝・愛宕真福寺
会見場に、ハリスと脇坂が対峙している。
脇坂の後ろには屏風があり、そこに水野が控えている。
テーブルにバラバラっと貨幣を並べるハリス。
ハリス「なんですかなこれは。この新二朱銀というものは、あきらかなる陰謀ですな。ドルの価値を三分の一に貶める巧みで、姑息な所業です。即刻中止してもらいたい」
脇坂、手拭いで汗をを拭きながら
脇坂「ですから、書状にも書いた通り、メリケンと日本の銀貨の価値が違うのです。一分銀は紙幣のような通貨でござりますれば・・・」
ハリス「それだ、それはいったいどういうことなのかね。まったく理解に苦しむ。納得いくように説明してくれんかね」
脇坂「・・・」
答えられずおろおろする脇坂、ゴホンと咳払いをする。
屏風の裏の水野が小声で話す。
水野「この一分銀、重さで計ればドルの三分の一の重さです」
脇坂「この一分銀、重さで計ればドルの三分の一の重さです」
水野「その理屈でいえば、確かにハリス殿の申される通り、1ドルは一分銀3枚分と等分ということになります」
脇坂「その理屈でいえば、確かにハリス殿の申される通り、1ドルは一分銀3枚分と等分ということになります」
水野「しかしながら、日本の一分銀は実質価値の3倍の価値があるのです。3倍の価値で流通させているのです」
脇坂「しかしながら、日本の一分銀は実質価値の3倍の価値があるのです。3倍の価値で流通させているのです」
水野「日本は金本位制を採用しています。銀貨は刻印を打って通用させている金貨の代用貨幣です」
脇坂「日本は金本位制を採用しています。銀貨は刻印を打って通用させている金貨の代用貨幣です」
水野「実質でなく額面で流通させている、すなわち紙の通貨と同じ形で使っており、紙幣のような通貨とはそういう意味でござる」
脇坂「実質でなく額面で流通させている、すなわち紙の通貨と同じ形で使っており、紙幣のような通貨とはそういう意味でござる」
ハリス「ばかな、そんなことができるはずがない。それではいくらでも価値を落とした粗悪な通貨、偽の通貨がはびこるではないか」
水野「それがはびこらないのでござる」
脇坂「それがはびこらないのでござる」
ハリス「なぜだ」

水野「日本にはそのようなことをする者はおりませぬ」
脇坂「日本にはそのようなことをする者はありませぬ」
ハリス「なんだと」
驚くハリス。
しかしすぐに思い直して
ハリス「そんなことがあるわけないだろう。ばかばかしい」
水野「ばかとはなんですか」
おもわず大声になる水野。
あせってあわてて口元にハンカチを当てる脇坂。
憤まんの表情のハリス。
断固たる決意を見せている水野。

 

○横浜・通り
堀と忠固らが話しているところに、撰之助が来る。
撰之助「殿ー」
忠固「撰之助か。どうだった、英一番との商談は」
撰之助「はい。まとまりそうです。が・・・」
忠固「どうした」
撰之助「それが、問題がありまして。生糸の量が・・・。なんと10万斤買うと」
堀「!!、じ、十万斤??」
撰之助「はい、お奉行。1千ではございません。1万でもございません。10万斤と言っております」
忠固「・・・」
ぶるっとふるえて
忠固「あっはっは。さすがに唐国や天竺を飲み込む英国、まさに恐るべし」
忠固、目を見開き
忠固「剛介」
剛介「は」
忠固「領内の上田・真田・信州全域から片っ端から生糸を集めい。さらに奥州からもかき集めるのじゃ。撰之助」
剛介、飛び出していく。
撰之助「はい」
忠固「上田藩の大阪物産所の在庫をすべて横浜に回させろ。急げ」
撰之助「は、はい、すぐに」
走り去る撰之助。
堀「・・・」
その様子を頼もしく感じ、少し安心する堀。

 

 

 

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