開国の父 老中・松平忠固

【834】第3話 A2 『白旗詰問』≫

○水戸藩邸・外観
『嘉永6年(西暦1853年)6月14日』

 

○同・応接間
上座に斉昭、脇に藤田東湖。
下座で報告をしているのは川路聖謨ともう一名の幕閣。
川路「メリケンの艦隊は2日前に去りましてございます。退去させるに成功したと言えましょう」
斉昭「・・・」
不機嫌な斉昭。
川路「ご公儀をはじめ諸藩に至るまで防御力に乏しく、また二百余年の泰平により武士道が衰えている現状では、戦いを挑めば我が国の滅亡は必至。きゃつらを追い返すことができたことは上々の首尾と言えましょう」
斉昭「喝っ」
びくっとなる川路と一名。

斉昭「まさか降伏したのではあるまいな」
川路「は?」
斉昭「降伏勧告を受け入れた故に何もせずに引き上げた、ということなのではないのか」
川路「降伏・・・、そのようなことがあるはずもなく。いったいどのようなお話・・・」
斉昭「ワシを見くびるな。知っておるぞ。白旗のことを」
川路「白旗・・・」
斉昭「南蛮人の決まりでは相手に降伏するときに白旗を振るという。きゃつらは交渉時に我らに白旗を渡し『降伏せよ。降伏する時はこの白旗を振れ』と申したというではないか」
唖然とする川路。
川路「・・・」
斉昭「どうなのだ。事と次第によればワシは幕閣ども全員を成敗する必要がある」
動揺する川路。
川路「お、お待ち下さりませ。そのようなことは決してござらん。降伏などするわけがござらん。確かに白旗なるやり取りはあり申した。しかしそれは降伏せよなどという要求などではありませぬ。きゃつらは江戸湾を測量する際にも白旗を掲げておりました。それは戦闘の意思はないという合図であるとのことでございます」
不満げに聞いている斉昭。
川路「いくら二百余年の太平で武士道が衰えたと言え、そこまで落ちぶれているわけではござらん。御老公にもしそのように思われているなら残念至極。ならば私がこの場で身をもって御公儀の確固たる意志を証明しても構いませぬ」
斉昭「・・・」
決死の覚悟の川路。
その姿を凝視する斉昭。
一触即発の場。

 

 

 

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