開国の父 老中・松平忠固

【835】第3話 A3 『忠優と阿部の対立』≫

○江戸城・外観
声「我は反対だ」

 

○江戸城・御用部屋
忠優、阿部、牧野、乗全、久世、内藤の老中6名が会議をしている。
忠優「御老公を幕閣に参加させるなど我はとても容認することはできぬ。御老公を幕閣にする、それはすなわち幕閣の最高意思決定者が老中首座の阿部殿から御老公に移譲されることに他ならぬ。そんなことになったら滅茶苦茶なことになる。ただでさえ未曾有の重大な事項を遅滞なく決定せねばならぬ時に」
阿部「であるので、海防参与ということで、海防のみご担当頂くということで」
忠優「あの方の事。幕閣に加わったら海防以外の事にも口をはさむに相違ない。いや、いちいち一つ一つ案件をかの耳に入れていたら一歩も進まぬどころかあらぬ方向へ突き進みますぞ」
阿部「海防以外のことについては協議に参加せぬよう私が責任を持ちまする」
忠優「阿部殿!」
他の老中「・・・」

二人の激しいやり取りをハラハラしながら口を出せない他の老中たち。
阿部「台場を建設し、大船建造を解禁し、さらに身分にとらわれない人材を登用する。どれも二百余年の祖法を改める所業。御老公の突破力なくしてどれ一つとも成し遂げることは叶わぬと思う」
忠優「それは・・・。間違いではござらん。しかしそれは病身にとってのまさに劇薬。一時は良いように見えてもその副作用によって身体全体を衰弱させるようなものではあるまいか」
他の老中「・・・」
両者の言い分は最もなので、頷く者、考え込むもの、様々な反応。
忠優「それに、御老公が幕閣に加われば、西洋の脅威だけでなく内なる脅威、幕政が根本から覆る要素がさらに一つ付加されよう」
牧野「内なる脅威?」
久世「幕政が根本から覆る・・・」
乗全「付加される一つとは?」
口を開こうとして口を閉ざす忠優。
忠優「・・・」
考え込む。
阿部「・・・」
他の老中「・・・」
そこへふすまの外から声。
声「申し上げます」
阿部「今、重大な会議中だ。後にしろ」
めずらしく興奮気味の阿部。
声「さらに重大なことにござりますれば」
イライラしながら顔を見合わす老中陣。
阿部「入れ」
入ってきたのは本郷泰固。
老中たちの前で深々と平伏する。
阿部「なんだ」
本郷ゆっくりと顔をあげ
本郷「本日6月22日、第12代将軍家慶様、御崩御なさりました」
老中陣「なにー」

 

○同・将軍の間
布団に横たわる家慶。
周囲には奥医師たち。
後ろに座る老中たち。
N「将軍徳川家慶は嘉永6年(西暦1853年)6月22日、死去した。ペリーが離日してからわずか10日後の事だった」

 

○同・安置所
略式的な葬儀が行われている。
喪に服している参列者たち。
N「これまでのならわしから家慶死去は1か月の間非公表となり、通常であれば喪に服する関係からその間の政府機能はほとんど停止するものだったが、今回は国家存亡の危機だけあり、政府業務は滞りなく継続された」

 

○長崎・応接所
プチャーチンと交渉している水野。
N「難局は続く。7月18日に来航したプチャーチンの目的は、ペリーと同じように国書の受理を要求するものであった」
険しい顔の水野。
N「そして・・・」

 

 

 

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