開国の父 老中・松平忠固

【851】第4話 A3 『上陸地交渉』≫

○横浜・金沢沖
無数の和船が浮かんでいる。
その和船の先には、立ち並ぶ8隻のアメリカ艦隊。
艦隊を取り囲むように陣取っている。

 

○ポーハタン号・甲板
幕府の役人が交渉をしている。
アメリカ側はアダムスが応対している。
役人「昨日も申した通り、どうか浦賀に戻って頂きたい。応接役も浦賀で待っておるのだ」
アダムス「我々は浦賀には断じて戻らぬ。交渉を行うというなら、再三言っているようにこの停泊地・ウェブスター島の対岸でお願いする」
役人「ウェブスター島?夏島のことか?。この横須賀・夏島沖では対岸と言っても何もないしどうにもならぬ。応接の準備ができるのは浦賀だけなのだ。どうあっても浦賀では納得して頂けぬのか」
アダムス「そうだ」
役人「・・・、分かり申した。では浦賀がだめだというなら、鎌倉を応接地とするのはいかがであろうか」
アダムス「鎌倉?」
隣のコンティが耳打ちをする。
コンティ「参謀長、鎌倉とはあの場所です。12日にマセドニアンが座礁した・・・」
アダムス「なんと」
コンティ「やはり連中は信用できませんな。これは間違いなく罠でしょう。かの地に我が艦隊をおびき寄せ座礁させるつもりでは」
アダムス「むむむ」
役人に向き直り
アダムス「バカバカしい。貴国は我が艦隊を座礁させようというのか。そもそもあれだけ浦賀にこだわっていたのにあっさり別の場所を指定するなど、それでは別に浦賀でなくともいい、ということに他ならぬではないか」

渋い顔の役人。
役人「・・・。一方が気に入れないならもう一方を提案しただけにござる。鎌倉も浦賀と同様、貴国を応接できる場所ということでござる。とにかく浦賀に戻ってもらわねば困る」
アダムス「そこまで言うなら仕方がない」
役人、喜んで
役人「おお、で、では」
アダムス「こちらから出向くしかあるまい。欧米では元首の使節は首都でもてなすのが常識である。貴国がそれができないのならこちらから江戸に赴くまで。わが蒸気船に招待するので、ぜひ乗船してもらいたく」
それまで横柄だった役人が今度は急に卑屈になり、地に伏せる。
役人「むむ無茶な。そんなことしたら私の首が飛ぶ。まま待って下され。それだけはせぬように伏してお願い申し上げる。この通りでござる」
突然土下座をして懇願する役人。
アダムス「・・・」
土下座され困るアダムスら。

 

○海上
海上に浮かぶ軍艦。
黒光りする大砲の砲身。
その砲身から砲撃される。
空を切り裂く榴弾。
その榴弾がはるかかなたの海上にドドドと落下。三本の水柱が上がる。

 

○軍艦・甲板
甲板で大砲を操作している水兵達。
その脇に司令官達。
そして司令官達の隣に日本人が見える。
その中に水野の顔。
水野「・・・」
隣に立つクルシウス。
クルシウスの背後にはためくオランダ国旗。
出島が見える。
『長崎』
クルシウス「いかがですかな、水野殿」
水野、驚いているがそれを隠すように
水野「なかなかのものですな」
ニヤリとするクルシウス。
指揮官に目で指示を送る。
うなずく指揮官、再び号令。
上官が手を振り上げながら
上官「セット(狙え)」
バッと手を振り下ろし
上官「ヒュール(撃て)」
火を噴く大砲。
ものすごい轟音とともに弾丸が発射され、はるか遠くの海上に着水する。
再び三本の水柱。
声を失う幕臣たち。
奇妙な静けさが漂う。
どうだとばかりに水野を見るクルシウス。
クルシウスの視線を意識した水野。
水野「よし、買おう」
クルシウス「それがよいと思います。で、どちらにしますか、帆船と蒸気船」
水野「両方じゃ、全部で20隻買う」
クルシウス「な、なんですと。い、1隻百万ギュルデンですぞ。20隻でしたら少なくとも百万両では済みませぬぞ。正気にございますか」
クルシウスの方を見直す水野。
水野「オランダ商館長クルシウス殿。貴殿はまだ我が国に赴任して間がないのでご存じないかもしれませんが、覚えておいて頂きましょう」
クルシウス「?」
水野「武士に二言はない」
クルシウス「・・・」

 

 

 

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