開国の父 老中・松平忠固

【852】第4話 A4 『2回目の大評定』≫

○江戸城・大広間
先日と同様の会議。
大勢の大名諸侯が集まっている。
先日と同じ配置で座っている。
牧野「昨年の7月より長崎に来航していたオロシア国は、9日前に出航致しました。徹頭徹尾ぶらかしに徹したのが功を奏した由にござる」
『おお』という歓声。
『ペリーに対してもぶらかしで行けるんじゃないか』などざわつき。
阿部「ペリーに対してもまずぶらかしでいく。しかしぶらかしはあくまで陽動、こちらは戦の一字を覚悟し交渉に臨む、でよろしいか」
斉昭「うむ」
一同、納得している。
忠優「・・・」
直弼「・・・」
無表情の忠優、不満顔の直弼。
阿部「迎撃体制の状況を説明せよ、まずは軍艦について、永井」
下座にいる永井。
むっとする直弼。
永井「はっ。浦賀で建造中の軍艦については作業は順調ですが、完成にはまだ時間を要します。水戸藩・薩摩藩も同様にござりまする。また、長崎でオランダより軍艦の買い付けを行っておりますが、これもすぐという訳にはいきませぬ」
しーんとなる一同。
阿部「続いて台場砲台について、岩瀬」
下座の岩瀬。
岩瀬「はっ。台場の状況でござるが、品川沖に11基建造予定の台場の内、第一から第三、第五、第六が完成。第四も7割ほど完成しており・・・」
直弼、脇坂に目で合図を送り
脇坂「あいやしばらく」
えっとなる岩瀬。
皆、脇坂の方を見る。
脇坂「その者、いったい誰なのでござるか。この場で発言できる者なのでござろうか」
静まり返る場。
岩瀬「わたしは・・・」
脇坂「控えよ、ここは幕閣・有力譜代の評定の場ぞ。最低でも目付以上でないと列席も叶わぬ筈。軽輩が参加できるような会議ではない。このような軽輩がなぜ参加しておる。あまつさえ発言など恐れ多いわ」
平伏する岩瀬、脂汗を流す。
ざわつく場。
ニヤリとする直弼。
阿部「・・・」
斉昭「・・・」
忠優「・・・」

不意を衝く指摘に唖然とする老中陣。
斉昭「そんなことはこの大事にどうでもよい。そんなことより・・・」
直弼「脇坂殿の言うことまさにもっとも。決してどうでもよくはござらぬ。むしろ大事だからこそ襟を正すべきであろう。これから戦に臨むとなれば綱紀粛正は必須。これがなくては戦になど到底勝てませぬ」
斉昭「うっ」
言葉を失う斉昭。
直弼「いったい誰がこの者をここに呼んだのか。誰がこのようなことを決めたのですかな」
静まり返る場。
脇坂が畳みかける。
脇坂「いくら緊急事態とはいえ現幕閣はあまりに勝手が過ぎるのでござらぬか。この者は親より家督もまだ継いでおらん書生、しかも仮に目付登用となれば親の上司となる。そんな人事は前代未聞、もはやめちゃくちゃでござる。現幕閣は異国よりもむしろこの国を破壊してるのではあるまいか」
直弼「誰が決めたのですかな、阿部殿ですかな。御老公ですかな」
再び静まり返る場。
斉昭「わ、わしではない」
阿部「・・・」
平伏している岩瀬、ばっと立ち上がり後ろにかけていき庭に出る。
そこで裃を脱ぎ捨て切腹しようとする。
忠優、瞬間的に立ち上がり、叫ぶ。
忠優「止めよ」
周りの者が岩瀬にとびかかり切腹を止める。
岩瀬「離して下され」
一同「・・・」
ほとんどの者は気の毒そうに事の顛末を見ている。
忠優「落ち着け、岩瀬。腹を切るのはおのれが成果を上げられなかった時にせよ」
どかっと座る忠優。
忠優「岩瀬を呼んだのは我だ」
阿部「!」
驚いて忠優を見る阿部。
忠優「直に目付となる段取りであるので、まだ拙速ではあるが説明をさせた」
阿部「・・・」
直弼「そんな勝手がゆるさ・・・」
忠優、直弼の発言を遮るように
忠優「責任を!」
直弼「うっ」
忠優「我が責任を取る」
静まり返る場。
小声で阿部が耳打ちをする。
阿部「忠優殿、岩瀬は私が・・・」
手で阿部を制す忠優。
忠優「この男は有能な男です。今後異国との交渉の要となりましょう。もしこの男がろくな働きしかできなかったら、我が責任を取りましょう」
一同を見渡す忠優。
忠優「よろしいか、ご老公」
むすっとしている斉昭。
斉昭「貴殿が責任を取るか、結構。しかと忘れぬぞ」
忠優の失脚に悪い気がしない斉昭。
忠優「彦根殿もよろしいか」
びくっとなる直弼。
直弼「・・・。指摘をしたのは脇坂殿でござるが」
忠優「よろしいか」
ぎろっと直弼を見る忠優。
直弼「・・・。結構でござる」
ざわつく場。

 

 

 

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