開国の父 老中・松平忠固

【873】第5話 C1 『密航』≫

○下田湾(夜)
小船を漕いでいる松陰と金子。
その先にはペリー艦隊がある。

 

 

○旗艦ポーハタン・甲板(夜)
カンカンと梯子を上ってくる音。
不審に思い、梯子に近づくと日本人が二人甲板に上がってきた。
驚く当直の水兵。
水兵「ヘイ。日本人が何をしに来た。帰れ、帰れ」
松陰「違う、攻撃しに来たのではない。私たちはこの船に乗せてほしいのです。貴国に連れて行ってほしいのです」

 

○同・提督室(夜)
コンコンとノックの音。
ノックの音に目が覚めるペリー。
ペリー「どうした」
コンティの声「お休みのところ失礼します。二人の日本人が甲板に現れまして」
ペリー「日本人だと。奇襲か」
コンティの声「いえ、そうではなくどうやらこの船に乗せてほしい、と言っているようで」
ペリー「なに」
考えるペリー。
ペリー「よし。すぐ行く。通訳のウイリアムズも起こすように」
コンティの声「了解」
ペリー、起き上がりつつ、時計を見る。
午前2時を差している。

 

○同・甲板(夜)
松陰が紙に中国語を描いている。
その紙を渡され読んでいるウイリアムズ。
そこへやってくるペリー。
ペリー、コンティに話しかける。
ペリー「この者達か」
コンティ「はい」
少し離れたところから松陰たちを観察するペリー。
ペリー「刀を二本差す資格のある身分の高い者達のようだな。くたびれてはいるが袴も立派だし、上流階級に共通する礼儀正しい洗練された物腰をしている」
コンティ「中国語を流暢に書きます。教養もあるようです」
ペリー「ふむ」
松陰「自分たちの目的はメリケン国に連れて行ってもらうことであり、そこで世界を旅して、見聞したいのです」
ウイリアムズら松陰らを囲む水兵たちに日本語で訴える松陰。
コンティ「確認が取れました。昼間、陸上で我々に近づき手紙を渡してきた二人です。どうやら本気のようですな」
松陰、ペリーに気が付く。
松陰「あなたがペルリ提督ですか。私たちは本気です。本気であなた方と一緒に行きたいのです。本気でなければこのようなことはできません。なぜなら密航は国禁を破る重罪。これが知れれば斬首となるからです」
ウイリアムズがペリーに説明する。
ペリー「話は分かった。私としても何人かの日本人をアメリカに連れていきたいとは思っていた」
ウイリアムズが中国語を速記して松陰に渡す。
松陰「で、では」
ペリー「だが、残念ながら君たちを受け入れることはできない。日本政府から許可を受けるまでは。我々はしばらく下田に滞在する。一度戻り許可が出るまで待つように」
松陰「そんなことはできません。陸に戻れば我々は首を斬られます。とどまることをどうか許してもらいたい」
ペリー「日本政府とようやく正式な条約を結ぶことができたのだ。それを早々に破ることなど文明国であるアメリカができるわけがない。しばし待たれよ。おそらくもう数年すれば自由に我が国と行き来することができるようになる」
松陰「数年どころか数日もありませぬ。我々には今しかないのです。しかもはや乗りつけた小船もありませぬ。戻ることなどできません」
松陰と金子、土下座をする。
松陰「お願い申し上げる。死を覚悟してのこの願い、それでも受け入れてもらえませぬか。願いを聞き入れて下さらねば、我々には死しかないのです」
一同「・・・」
同情的な表情の一同。
ペリー「かわいそうだが駄目だ。もし君たちが日本政府から罪に問われるというなら、我々も全力で君たちを擁護する。できうる限りの仲裁の労を取る。今は帰るのだ」
松陰「ぐっ、ぐおおおおおおー」
顔を伏せ、悔し涙を流す松陰。

 

 

 

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