開国の父 老中・松平忠固

【874】第5話 C2 『クーデター、発覚』≫

○阿部邸・応接間(夜)
閉め切られた狭い応接間。
阿部が悩み顔で座っている。
書状を読んでいる忠優。
忠優「これは・・・」
阿部「読んでの通り、私と御老公を公儀から追放する陰謀でござる」
忠優「・・・」
阿部「彦根藩主・井伊直弼と若年寄・内藤頼寧が結託、溜間諸藩、津藩主・藤堂高之等と共謀し、彦根を大老に、先々代将軍・家斉公の実子であられる津山藩主・松平斉民様を参与を据える、というもの・・・。上様のお手に届く寸前に本郷が間違えたふりをして私に送ったのです」

忠優、事の深刻さを理解する。
阿部「以前やはり御老公を陥れる陰謀がござったな。御老公が水戸藩主を追われることとなった事件が。あれは水戸藩内のことだったので私の権限の範囲内で何とかできた。しかし今回は桁が違う。我ら老中よりも溜間は家格が高い。その上大老家である彦根を大老に、先代家慶公の弟君が参与となると、もはや私の手にはとても追えない」
忠優「・・・」
阿部「この陰謀を止められる人はたった一人しかおらぬ」
忠優「上様か・・・」
阿部「そうです。上様にご判断を仰ぐしかない。しかもこの密議が表に出た後では、いくら上様でも容易に防ぐことはできまい。私より井伊の方が、そして神君家康公までさかのぼらないと御血筋がたどり着けない御老公と現上様の叔父に当たる斉民様では、家格が雲泥の差であるゆえ。である故、陰謀が実行される前に先手を打って上様に信を問う、のです」
忠優「それは・・・。見事な判断です。さすが阿部殿と言えるが・・・。あの上様ですぞ。危険な、あまりに危険な賭けとなるが・・・」
阿部「・・・」
ふっと緊張を解く阿部。
阿部「慰留されなければそれはそれでよいのです。これまでも分不相応な役割をさせて頂いた。今後は老中を離れて相応な海防掛でもやれば、それはそれで全力を尽くすまで」
忠優「・・・」
承服しかねる忠優の微妙な表情。

 

 

 

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