開国の父 老中・松平忠固

【896】第6話 D4 『嫌な予感』≫

○薩摩藩邸
斉彬、慶永、宗城、西郷を前に藤田東湖が報告をしている。
斉彬「ロシアとも条約を締結したと」
東湖「最新の情報です」
西郷「殿、はばかれたでごわす。阿部様は殿に真っ先に情報を提供してくれるとおっしゃりました。やはり信用できぬ方ではありませぬか」
斉彬「・・・」
さみしげな表情の斉彬。
斉彬「西郷、お主、そう思うか」
西郷「・・・」
西郷、斉彬の気持ちを察する。
西郷「これはおいの言葉が間違っておりました。阿部様は信用できる方にござります。報告はすぐにこちらにも来るでしょう。遅くなるのはやむを得ませぬ。なにせ政策決定の場にいる訳ではありませぬから。これを変えたければ自らが政策決定の場に参加できるようにしなければならぬでしょう」
東湖「西郷君、それはあまりに非現実的な空論であるな。外様の薩摩殿が政策決定に加わるなど天地がひっくり返ってもありえぬこと。副将軍家である水戸徳川家でさえこの二百余年の幕府の歴史の中で初めて大殿が公儀参加がかなったのでござるぞ」
斉彬「いや・・・」
東湖を制する斉彬。
斉彬「それしかあるまい。わしはそれをやってのける所存である」
一同、斉彬の迫力に圧倒される。
西郷は誇らしい表情。

東湖「重大な報告がもう一つ。メリケンとの条約ですが不備がありまして、18ヶ月後にメリケン人が下田に駐在することになります」
一同「なんだと」
東湖「和文ではなく、オランダ語の条文にはそのように記載されているのです」
慶永「そ、それはわざと和文にはその事実を記さなかった、隠したということでござるか」
西郷「まさか、いくらなんでもそんな大それた・・・」
宗城「いずれにしろ南蛮人が出島でなく、この日本国本土に住むことになる。皇国三千年の歴史上許されることなのか」
立ち上がり、強い決意の表情を見せる斉彬。
斉彬「・・・、確かに、もはや公儀に任せている訳にはいかぬ」

 

○街道
籠に揺られて進む松陰。
同じく象山。

 

○忠優の部屋
忠優が布団の上で上半身を起こしている。
井戸と石河が見舞っている。
忠優「で、あの件はどうなった」
井戸「はい。松陰と象山は地元で蟄居、ということに相成りました」
石河「ですが、少し前ならば死罪は免れぬところ。いくら異国と条約を結んだからといってかなり無理が。これがまた攻撃の材料とならなければよいのですが・・・」
忠優「そうか、それはいい。済まぬがまた休ませてもらう」
石河「御加減が悪いのに申し訳ございませんでした」
井戸「ゆっくりお休みくださいませ」

〇道
帰り道の井戸と石河。
井戸「まさか御前が体調を崩されるとはな。長年の付き合いで初めてだ」
石河「無理もあるまい。これだけの激務だ。針のむしろ、四面楚歌は強まるばかりだし」
井戸「これでは御前や阿部殿の身体がいくつあっても足りぬ。何か手立てはないものか」
不安げに歩き去る二人。

 

 

 

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