開国の父 老中・松平忠固

【903】第7話 B3 『十八・松平』≫

○水戸藩邸
斉昭が引きこもっている。
使いが来ても、手であっちいけと追い払っている。

 

○江戸城・大広間
譜代大名が10数名集まっている。
それらに向かって忠優と乗全が上座に、脇に井戸と石河が座っている。
乗全「ここにお集まり頂いたのは、譜代大名の中でも特に幕府二百余年の歴史を支えてこられた十八松平の面々であります。いまメリケン・ロシア・エゲレスと直接交渉した担当から説明させたように、この未曽有の危機を乗り切るためには特にここにお集まりいただいた松平家のご協力が欠かせません。ぜひお力添えをお願いする次第でござる」
しーんとする場。
落ち着きなく左右を見回したり、顔を下に背けたり、やる気のない面々。
乗全「・・・」
忠優「・・・」

乗全、気を取り直して
乗全「水戸の御老公が6月30日に軍政参与を辞任して以来、海軍伝習所の開設に暗雲が垂れ込めておる。外様大名どもがこぞって反旗を翻しておるのだ。ここは譜代の皆様が進んで海軍に参加し、外様などいなくてもやれる、というところを見せようではありませぬか」
しーんとする場。
反応がない。
譜代Aがぼそっと口を開く。
譜代A「我が藩には海がないので海軍は関係ありませぬし」
譜代B「いや、海があればというものでもござらぬ。いきなり西洋船を作れなどといわれても」
譜代C「そもそも財政難でしてな。そんな金など一銭もありはせんわい」
ひそひそと愚痴が飛び交う。
さすがに乗全、切れる。
乗全「我が国存亡の危機でござるぞ。少なくとも外様には異国に対抗しようという気概はある。公儀を支える譜代がそんなことでどうしますか!」
またしーんとなる。
誰かれとなく声がする。
声「そもそもなんでそんな条約を結んだのじゃ」
声「そうじゃ。これまで通り、異国船が来ても帰ってもらえばよかったじゃないか」
井戸もいらっと来て
井戸「今もお話ししたじゃないですか。条約を結ばねば今頃は戦になっておったのですぞ。我が国が蹂躙され占領されておったのですぞ」
またしーんとなる。
誰かれとなく声がする。
声「戦、上等ではないか」
声「それこそが本意。夷狄など切り刻んでやるわ」
声「なぜ戦う前から負けるなどというのじゃ。臆病者が」
井戸、思わず腰を浮かすが石河が止める。
声「そもそもこの危機的状況を生んだのは、忠優殿と乗全殿の失政が原因との声もある」
声「御老公は潔く参与を辞任して責任を取られた。お二方も責任を取るべきだという声も高まっておりますぞ」
声「失政の責任をこちらに押し付けるのは筋違いというものじゃ」
忠優もいらついて
忠優「誰ぞ」
またしーんとなる。
忠優「言いたいことがあるなら、はっきり言いなされ。誰ですかな。今発言したのは」
誰も答えない。
忠優「竹谷(たけのや)」
指名された者、下を向く。
忠優「形原(かたはら)」
指名された者、隠れる。
忠優「大草(おおくさ)」
指名された者、縮こまる。
忠優「わが藤井松平・乗全殿大給松平を含め十八松平家が先陣を切ってこの国を守らねばならぬのではないか。我らが先祖はそれをしたからこそ所領を賜っておるはずではないか」
シーンとなる場。
反応はない。
乗全「はぁ」
脱力する乗全。
ため息をつく忠優。

 

○同・庭
夏の花が咲いている庭。

 

○同・大広間
皆のいない広間。
忠優と乗全だけが残されている。
乗全「まったく、公儀を支える譜代でもその中核となす十八松平がこの体たらくですからな。困ったものですな」
忠優「・・・」
遠くを見やる忠優。
忠優「もうこのあたりか・・・」
乗全「は?」
遠くを見る忠優。
その忠優を心配そうに見る乗全。
乗全「・・・」

 

 

 

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