開国の父 老中・松平忠固

【918】第8話 B2 『デント商会』≫

○外灘
岸に豪華なコロニアル風の洋館群が並んでいる。
建物群の前の大通りには、馬車が行き交い、軍隊の隊列が行進しているのが見える。
N「上海。元はひなびた漁村であったこの町は、アヘン戦争で清国が敗北した対価として西暦1842年にイギリスに強制的に租借され、続いて48年アメリカ、49年フランスもにもそれぞれ土地を租借された。治外法権が認められた租界には、欧米人の商人が多数進出し、上海はまさに一夜にして大都会となっていた」
ヨーロッパスタイルの館がびっしりと並んでいる光景に感嘆する。
水野「す、すごい。長崎の何十倍、いや比べようもない・・・」
忠優「・・・。まさかこれほどとは」
軍隊の行進や商人たちなど大勢の欧州人が忙しそうに行きかっている。
また、公園では欧州人が女性とティータイムを楽しんでいる。
水野「・・・」
口をあんぐり開けて驚いている水野。
その驚いている皆の姿を見て満足そうなクルシウス。
クルシウス「どうです。あなた方の国でいう百聞は一見に如かず、上田候、上海に来れば分かると言った意味がお分かり頂けたかな」
忠優「・・・」
クルシウスの言葉など耳に入らないかのような忠優、次々と視線を移している。
忠優、くるっとクルシウスの方を向き、
忠優「・・・」

クルシウス「ホワット?」
おもむろに手を出す忠優。
クルシウス、ニヤッとしてそれに応え、二人がっちり握手をする。
忠優「降りて見てよいか」
クルシウス「ナテゥールリック(オフコース)」
桟橋に到着する艦船。
桟橋で手を振って待っている男、音吉である。

 

○デント商会・外観
外灘に並んでいるコロニアル風建築のひとつ。
『デント商会』

 

○同・応接間
外灘を見渡せる応接間。
忠優と水野、剛介らが部屋に招き入れられ、音吉が応対している。
水野、忠優に音吉を紹介する。
水野「御前、この者が音吉です。先日締結した日英和親条約交渉時にエゲレス代表団の通訳をしておりました」
深々とお辞儀をする音吉。
音吉「ぜ、前御老中様と伺っております。こ、ここは日本ではないゆえ平伏できず、た、たいへんご無礼を致します」
忠優「いや、いい。話は水野より聞いている。水野からの帰国要望、官吏登用話を断ったそうだな」
少しホッとする音吉。
音吉「申し訳ありません。すでにこちらで結婚をし家庭があり、足場が築かれているものですから」
音吉、忠優を座らせる。
音吉「まずは長旅の疲れをいやして下さい。一休みされたら街をご案内いたします」
そそくさと出ていく音吉。
その様子を見ている忠優と水野。
水野「あの者はなんとここのエゲレスの商館で番頭を任されている、とのことです」
忠優「番頭・・・、ここはエゲレスの店なのか・・・。日本人がエゲレスの店で番頭ができるのか・・・」
水野「驚くべきことながら」
忠優「・・・」
考え込む忠優。
忠優「この店は・・・、なんという名だ」
水野「たしかデント商会と。和名は奴が難破した船・宝順丸から取って宝順洋行と称しておるようですな」
忠優「デント商会・・・」
なにか思案している忠優。

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

開国の父 老中・松平忠固

PAGE TOP

© 開国の父 老中・松平忠固史 2020 All Rights Reserved.