開国の父 老中・松平忠固

【931】第9話 A3 『老中再任』≫

○江戸城・外観

 

○同・謁見の間
老中の任命式が行われている。
辞令を受ける忠優。
N「同年9月13日、松平伊賀守忠優は老中に再任。老中首座・堀田備中守正睦に次ぐ次席の席次である。なお忠優は老中再任に先立ち、名を忠優から忠固と改名した。以後は松平伊賀守忠固として公儀に復帰することとなる」
将軍家定の席は空席。
列席している斉昭・斉彬・慶永・直弼らの顔。
下座に井戸、川路、水野、岩瀬の顔。

 

○同・御用部屋
堀田・久世・内藤が忠固を迎えている。
堀田「よう戻られた忠優殿、いや、今は忠固殿か」
久世「なぜ改名などされたのです?。『優しい』から『固い』に変わるぞ、という決意表明ですかな」
内藤「それはあるまい。今までだってちっとも優しくなかったではないか。はっはっは」
和やかな雰囲気。
忠固「阿部殿不在の期間、ご苦労でございましたな。阿部殿亡き今、さらに大きな決意を以て臨まねばなりませぬ。特に異国との交渉は」
一同「・・・」
表情が曇る一同。
忠固「?」
堀田「実は、、今はそれどころじゃござらん」
忠固「?」
久世「それはこれから分かります」
内藤「ほれ、来ましたぞ」
声「溜間の方々が参られました」

ぞろぞろと直弼を先頭に入ってくる溜間勢。
その中に脇坂安宅もいる。
脇坂「遅れて申し訳ない。掃部守様と大事な話がありましてな」
老中側の席に座る。
下座に着座する溜間勢。
直弼は忠固には目を合わせない。
それを確認する忠固。
飛溜「この度は伊賀殿、脇坂殿、老中就任お喜び申し上げる」
直弼以外は頭を下げる。
脇坂「かたじけのうござる」
忠固も頭を下げない。
緊張の空気が走るが
忠固「掃部守殿をはじめ、溜間の方々には今後ともよろしくお願い申し上げまする」
深々と平伏する忠固。
直弼「・・・」
それを見て、直弼、表情が緩む。
直弼「うむ、期待しておるぞ、伊賀」
飛溜A「ところで、伊賀殿、貴殿は国に帰られていたからよく分かってないと思うが、現在何より優先すべき案件は上様継嗣の件ぞ。存じておるか」
忠固「上様継嗣?」
飛溜B「作用。異国の脅威がそこまで迫っている今、一刻も早く上様の跡継を決めねばなりませぬ」
飛溜A「最もふさわしいのは紀州慶福様。慶福様以外はあり得ぬ。一刻も早く慶福様に決めるべきである」
飛溜B「伊賀殿、いつまでも決められぬ政では困りますぞ。脇坂殿は当然慶福様支持にござる」
隣に座る脇坂、したり顔。
忠固、きょとんとした表情で
忠固「ちょっと待たれよ。上様は去年末に篤姫様と婚儀を執り行われたばかりではないか。どなたもこなたもなかろう」
一同「・・・」
直弼がしたり顔で
直弼「我らは上様を案じての、徳川将軍家を案じてのこと。メリケンの使者がこの江戸城に上府することが決まった以上、もはや一刻の猶予もあるまい」
忠固「・・・」
よくつかめない顔の忠固。

 

○同・御用部屋
時間経過。
斉昭・慶永ら外様勢が挨拶している。
斉昭「・・・」
忠固が老中に復帰したことが気に食わない斉昭。
忠固「・・・」
その空気を感じて警戒する忠固。
斉昭「戻ってきたか、伊賀」
忠固「・・・。阿部殿亡き今、粉骨砕身お役目を全うする覚悟にて」
斉昭、その男気に気分よくして
斉昭「うむ、その意気やよし!」
二人の空気に安どする慶永。
慶永「それはそうと、今解決するべきは上様継嗣問題である。伊賀殿は存じてありますかな?」
忠固「ついさっき知り申した」
慶永「よろしい。ついては、上様の継嗣には一橋家当主の慶喜殿が最もふさわしいと存ずる」
忠固「・・・」
堀田の方を見る忠固。
堀田も困り顔。
慶永「ハリス上府も迫っている今、英才明晰な方でないと上様は務まりませぬ。その点、慶喜様はその御見識的にも年齢的にももっともふさわしい方。さらに一橋様はご老公の七番目のご子息にもあたられます」
息子のこととなると傲慢な態度が影をひそめる斉昭。
斉昭「いや、わしはよい」
忠固「・・・」
腑に落ちぬ忠固。
忠固「斉彬殿はどうなのだ。篤姫様が去年輿入れしたばかりでは。当然のごとく、まだまだご懐妊される可能性があろう」
慶永、縁起がかった悲しげに
慶永「これはここだけの話、上様にはお子ができぬこと、もはや明らかでござる。これまでの御台様たちにお子が生まれなかった故。実は斉彬殿も覚悟してござる。お子が出来ぬ覚悟の上で篤姫様を送られたのだ」
忠固「子ができぬ覚悟の上・・・」
少し驚いた表情の忠固。

 

 

 

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