開国の父 老中・松平忠固

【932】第9話 A4 『乱心』≫

○下田・下田奉行公邸・外観
声「一体いつになったら江戸に行けるのか」

 

○同・応接間
ハリスとヒュースケンが入ってくるなりオーバーアクションで抗議している。
応対している井上と岩瀬。
ハリス「この国に来てからもうすぐ一年だ。もはや我慢の限度は超えた。今度我が国の艦隊が到着した際には武力で訴えますぞ。現在イギリスやフランス軍が清国の広州を攻撃しているように」
井上、席に着席するように促す。
席には豪華な料理が並んでいる。
井上「まぁまぁ、ハリス殿。魚をフレッシュなうちに」
ハリス「むぅ。うむ」
席に着き、上手に箸を使いこなし、刺身を食べるハリスとヒュースケン。
ハリス「この金目鯛といいうのは本当にうまいのぉ。初めは気味が悪かったが、すっかりファンになってしまった」
ヒュースケン「私は煮付けの方が好きですな。何度食べても飽きません」
井上、苦笑している。

岩瀬、咳払いをして
岩瀬「お気持ちはごもっとも。我らも一刻も早くメリケン国総領事殿を江戸にお連れするべく努力しております。江戸上府が決定しただけでも、とてつもない快挙なのですぞ。それはよくよく理解して頂きたい」
井上「もうしばらくお待ち下さい。政府の陣容も変わったので、具体的に間もなく動き出すはずです」
ハリス「ほう。どのように変わったのですかな」
井上「・・・」
情報漏えいを警戒する井上に対し、岩瀬は米国側に対して前向き。
岩瀬「江戸上府を頑なに反対していた方が退かれ、入れ替わりで前向きな方が入閣されたのです」
ヒュースケン「それは、ゴローコーですか。辞めたのは」
岩瀬「そうです」
ヒュースケン「で、新たに入ってきた前向きな人というのは誰です?」
岩瀬「松平伊賀守様です」
ハリス「イガノカミ・・・」
ヒュースケン「その人は力を持っているのですか」
岩瀬「はい。言ってみれば、ナンバー2です」
ハリス「ほう。それは楽しみだ。だが下田を離れるとなるとこの旨い刺身ともお別れになるな。はっはっは」
ヒュースケン「江戸は噂の百万都市。ここよりはるかにエキサイティングだと思いますよ。ははは」

 

○江戸城・御用部屋
忠固が本郷泰固と井戸と会っている。
本郷「御老中復帰、誠におめでとうございまする。伊勢様もお喜びのことと存じまする」
忠固「本郷、お主も晴れて大名となったか。御側衆から若年寄とは異例の大出世じゃの」
本郷「はい。これもひとえに伊勢様と伊賀様が私を登用して下さったゆえのこと。深く感謝申し上げまする」
忠固「ただ、気になるのは上様じゃ。上様は大丈夫であるか」
表情が暗くなる上様。
本郷「それが・・・」
忠固「我が面談を申し入れても会って下さらぬ。いや、前からそういう方ではござったが、だが何か違うような」
本郷「・・・。はい。御推察のように上様は近頃異様な行動をされ・・・、いえ以前のうつけの行動とは明らかに違って、お暴れになられることが多いとのこと・・・」
忠固「暴れ・・・。最も信頼されていた阿部殿が亡くなり、最も頼りにしていたお主が離れたのじゃ。不安にもなろう。引き続きお主も心を配れ。我は折を見て上様にお会いする」
本郷「はっ」

 

○同・将軍の間
破かれているふすま。
引きちぎられている掛け軸。
割られている壺。
息を荒げている家定の後ろ姿。

 

 

 

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