開国の父 老中・松平忠固

【933】第9話 B1 『両陣営の賄賂』≫

○江戸の町
活気のある日本橋界隈。

 

○越前藩邸・外観
声「松平忠固様?」

 

○同・中根の部屋
左内が家老格の中根靱負(50)に進言している。
中根「そうだ。今度老中次席に入閣された」
左内「・・・。中根様、失礼ながら存じ上げませんがどのようなお方なのですか」
中根「阿部伊勢守殿が老中首座であった頃の老中で当時席次は四番、不祥事により安政二年に罷免されておる。上田五万石藩主にして酒井雅楽頭家出身じゃ」
左内「罷免・・・、そんな方を次席に登用したのですか。それに酒井姫路といえば・・・、では溜間勢でありますな」
中根「まぁ、そうなるな。譜代名門出を笠に着て、傲慢不遜な性格じゃ」
左内「共に新たに入閣した脇坂安宅様も井伊彦根様の手の者。堀田首座様も溜間ご出身。ということは、阿部様亡き後の幕閣は溜間勢で占められた、と考えた方がよろしいですな」
中根「うむ、まぁ、そうなるな」

左内「いずれにしろ、まずはその次席様にご挨拶をして反応を見ましょう。どのくらいがよいでしょうか。一箱でよろしいでしょうか」
中根「うむ、よかろう。勘定方にはわしが言っておく。おまえは早速準備に取り掛かれ」
左内「はっ」

 

○上田藩邸・外観
『上田藩邸』

 

○同・応接間
『安政4年(西暦1857年)9月28日』
井伊使者が待っている。
応対に現れたのは家老の岡部。
岡部「これはこれは。彦根様のお使者様がわざわざ幣家にお越し頂き、かたじけなく存じまする」
使者「老中次席就任、おめでとうございまする。今日はつまらないもので申し訳ないがお持ちした次第で」
岡部「御心遣い誠にありがとうございまする。あいにく殿は不在でありまして」
使者「存じておる、存じておる。お忙しい御身じゃ。今日はあくまでお祝い品を届けに来ただけでな」
岡部「本当に痛み入りまする」
使者、後ろを向き、手をパンパンと叩く
使者「これへ」
さーっとふすまが明き、風呂敷に包まれた大きな箱が3つ運び込まれる。
それを見て血の気が引く岡部。
岡部「・・・」
驚く岡部の顔を見てニヤリとする使者。
岡部の前に並べられた3つの風呂敷包みの真ん中を解くと大きな木箱。
木箱のふたを開けると、まばゆいばかりの黄金が敷き詰められている。
岡部「こ、、これは・・・」
使者「ぜひお納めください」
左右の風呂敷堤も解かれ、目の前に3つの千両箱、3000両の黄金。
岡部「こ、こんなに。い、いえ、お受けできませぬ。このような額。とても受け取れません」
使者「井伊掃部守にとってすればこのくらいは当然のことである。驚くにはあたらない」
岡部「そ、そうでございますか・・・。が、しかし・・・」
表情がかっと厳しくなる使者。
使者「岡部殿」
岡部「は、はい」
使者「わしは溜間筆頭井伊掃部守の名代でござるぞ」
岡部「ははー」
平伏する岡部。
使者「掃部守様は、現将軍家定公の従兄弟に当たられ将軍継嗣が確実視されている紀州藩主家福様の後見もなさっておいでなのですぞ」
岡部「は、ははー」
使者「よろしい。ではくれぐれも忠固殿にお頼みするぞ」
困惑の極地の岡部、平伏する。
岡部「・・・」

 

 

 

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