開国の父 老中・松平忠固

【974】第11話 D2 『謹慎隠居』≫

○江戸城・外観
『安政5年(西暦1858年)7月1日』
乗全の声「ご、ご危篤・・・」

 

○同・御用部屋
乗全と久世、直弼と脇坂、間部ら老中全員が集まっている。
乗全「上様が・・・」
久世「奥医師はそう言っている」
沈痛な乗全と久世。
直弼、冷静な表情で脇坂に目で指示。
脇坂「先日の不時登城に対する処分ですが、上様が存命のうちに発した方がよろしいかと存ずるが」
乗全「なっ」
久世「上様がご重体であらせられるのに、処分を発表するというのか。それも御老公と水戸・尾張という御三家当主に対し・・・」
脇坂「逆にご存命だからこそ行うのです。申し上げたくはないがもし上様が亡くなりでもしたらもう処分などできなくなる。そうなれば、もはや混乱の極地に陥るは必定」
久世「だ、だが・・・」
乗全「し、処分とはいかなるものか」
脇坂、直弼の方を見る。
直弼「御老公、尾張慶勝殿、越前中将殿は謹慎・隠居」
久世「謹慎・隠居・・・」
乗全「家督を継嗣に譲って引退、ということか・・・。御老公はともかく慶勝殿と慶永殿はまだお若い。それはさらに争いの火種になるぞ」
直弼、遮るように
直弼「不時登城は重罪。それは御三家だからといって不問にしたら法や律は全く守られぬものとなりましょう」
乗全「そ、それは・・・」
直弼「台慮を以て行えば文句はあるまい」
乗全、ハッとなり
乗全「それだ、大老殿はそうして台慮を私物化してないか。それは上様の意ではないではないか!」
直弼「上様が応えられる状態でないからこそ、御継嗣の発表を急いだのではないか。この上は徳川宗家御相続の準備も急ぎ、変事に備えるが得策である」
乗全「な・・・」

 

 

 

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