開国の父 老中・松平忠固

映画ドラマ脚本

【810】第1話 C2 『鳥居の暗躍』≫

○江戸南町奉行所・表
荘厳な門構え。

 

○同・御白洲
人々が列をなして座っている。
前の者から順番に控えの間に通されている。
N「蛮社の獄で渡辺崋山・高野長英らを処分し、高島秋帆を無実の罪に着せた鳥居耀蔵は、目付の諜報組織を手にしたまま江戸南町奉行となり、天保14年(西暦1843年)8月14日には勘定奉行をも兼帯するというとてつもない権力を奮っていた。現代でいうと、警察庁長官と最高裁長官と財務大臣を兼務するようなものである」
茶坊主に賄賂を渡す商人。
後ろに座っていた商人が順番が前の控えの間に通される。

 

○江戸城・御用部屋
水越が役人に指示を出しているが、イライラしてしている。
N「その鳥居を取り立てた老中首座・水野忠邦は天保の改革を断行していたが、これがうまくいかず、有力大名や御三家までも反対するありさまで、水野は窮地に立たされていた」

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【811】第1話 C3 『意気投合』≫

○江戸城・謁見の間
将軍から老中就任の辞令を受けている阿部。
N「天保14年(西暦1843年)閏9月11日。阿部正弘は25歳の若さで老中に就任した。その2日後には天保の改革失敗により老中首座水野忠邦が罷免された」

 

○沿岸
港に来航する軍艦。
N「阿部が老中に就任するや続発していた難題がさらに降りかかる。天保14年10月10日イギリス軍艦サマランが八重山で測量を強行、天保15年3月11日フランス軍艦アルクメーヌが那覇に入港・通商を要求、同年7月2日オランダ軍艦バレンバン長崎入港・通商要求と異国船の襲来が頻発し、国内では江戸城が炎上するなど混乱を極めていたのだ」

 

○参道
静けさに包まれた参道。
8月の強い日差し。
蝉がものすごい勢いで鳴いている。
その中を3人の男が上っていく。

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【812】第1話 C4 『忠優、老中就任』≫

○江戸城・外観
『江戸城・3年後』

 

○同・廊下
忠優を先頭にさっそうと歩く一団。
忠優のすぐ後ろに続く二人の男、石河政平(43)と井戸覚弘(45)。
『石河政平』
石河「3年ぶりの江戸城はいかがでござりまするか」
忠優「懐かしいな、だが感慨に浸っているわけにはいくまい」
『井戸覚弘』
井戸「いよいよ忠優様がご老中に。我らかつての直属の部下としては、これほどの喜びはござらぬ」
忠優「フッ、石河、貴様は勘定奉行になって何年になる?」
石河「5年になります」
忠優「井戸、貴様の長崎奉行は何年目だ?」
井戸「3年目です」
忠優「そうか、これからは思う存分働いてもらうこととなろう。覚悟はよいな」
石河・井戸「はい」
歩いていく一行。

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【813】第1話 D1 『水野忠徳、登用』≫

○応接間
井戸が若手官吏を面接している。
若手A「異国船の対応など何年にいっぺんの事、来るかどうかわからぬことに気を病んでも無駄でしょう。仮に来たとしても毅然とお帰り頂ければよい」
場面が代わって別の若手。
若手B「先日のイギリス船が不届きにも浦賀沖を測量した際だって簡単に追い返したではないですか。しかもそれをしたのはお奉行、貴方ではないですか。なにをそんなに杞憂しているのです」
場面が代わって別の若手。
若手C「異国船が武力に訴えてきたら?そうなればこちらも反撃するまで。唐の国が戦に負けたというのも、唐人どもが油断したか、情けないだけでしょう。我が国は違います。もし我が国と戦になったら、この日本刀の切れ味を異人共は思い知ることになるでしょう。これこそ武士の望むところです」
ため息をつき、やれやれという顔の井戸。

 

○馬上
護衛に警護され、馬に乗って歩いている忠優と井戸。
忠優「人材はなかなかおらぬか」
井戸「はい。これはと思う人物と片っ端から面談しておりますが、皆判で押したような答えしか返ってきませぬ」
忠優「そんな中でこちらからこうして会いに行く人物というのは相当なものだな」
井戸「・・・」
口ごもる井戸。
井戸「大変言いづらいのですが・・・、こちらから会いに行かざるを得ない事情がありまして」
忠優「ん?」
井戸「実はこれから会いに行くその男、謹慎中でありまして。家から出られませぬ。有能な男ですが歯に衣着せぬ言動がありまして、上役に対しても平気で意見するものですから行く先々で嫌われまして。現在火付け盗賊改め方に飛ばされた挙句、謹慎しております」

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【814】第1話 D2 『クルシウス』≫

○長崎港
各地に軍艦が来航している。
N「異国船の来航は天保年間が終わっても続いていた。弘化2年(西暦1845年)3月には米国マンハッタン号浦賀入港、7月には英国サマラン号長崎入港、弘化3年4月英船でベッテルハイム那覇上陸、5月仏国セシル提督長崎来航、閏5月米国東インド艦隊司令長官ビットル浦賀で通商要求。忠優が海防掛に就任するや否や米船プリマス号北海道漂着、5か月後には英軍艦マリナー号浦賀来航」
浦賀に来航した英国軍艦。
『マリナー号』
マリナー号の甲板に英国人艦長の後ろに立っている中国人の格好をした男。
中国人の格好をしているが音吉(30)だというのが分かる。

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【815】第1話 D3 『黒船、現る』≫

○海上
霧が立ち込めている海上。
漁をしている2隻の漁船。
ゴーという轟音が響いてくる。
漁民A「お、おい」
漁民B「な、なんだ、地震か」
漁民A「ばか、海の上で地震があるか」
おおっと揺れる船でバランスをとる漁民。
霧の中からうっすら姿を現す影。
漁民A「な、なんだ」
だんだん大きく、だんだんはっきりしてくる。
漁民A「うわー、な、なんだ」
漁民B「に、にげろ」
バーンとついに姿を現す黒船。

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【816】第1話 D4 『ペリー艦隊』≫

○海岸・丘の上
沿岸警備の武士たちが数十人で眼下に黒煙を吐きながら進むの黒船を見て呆然としている。
眼下には碇をおろし停泊している黒船4隻。
丘の上にはすでに黒山の人だかりになっている。
走って逃げるもの、走って見に来るものが入り乱れている。

 

○街道
陽はすでに暮れている。
早馬が走る。

 

○江戸城・外観
早馬が入っていく。

 

○老中部屋
使いの者が報告をしている。
部屋にいる牧野、乗全。
牧野「な、なんじゃと」
驚く乗全。

 

○庭
鉄砲の試射をしている井戸、川路、水野。
やはり報告を受けている。
井戸「まことか」

 

○忠優の控室
座禅を組んでいる忠優。
そこへ入ってくる阿部。
忠優の後ろに座り
阿部「本当に来ましたな、きゃつらが」
忠優「・・・」
瞑想していた忠優、かっと目を見開く。
遠くを見る阿部と忠優。

 

○海上
江戸湾で停描しているペリー艦隊。
行く先にははるか江戸の町が見えている。

 

第1話 完

 

 

 

【817】第2話 A1 『ペリーの決意』≫

○江戸湾口
突き進むペリー艦隊。
周辺に浮かぶ漁船を木の葉のように揺らしながら進んでいく。
漁船の漁師達は驚きながら巻き込まれないように櫓をこいでいる。
大島を右舷に、三浦半島東端の剣崎を左舷に見ながら江戸湾内に侵入している。
N「嘉永6年(西暦1853年)6月3日、マシュー・ペリー提督率いるアメリカ東インド艦隊4隻が日本に来航した。近年の頻発する異国船来襲、浦賀にも7年前にアメリカ東インド艦隊司令長官ビッドルがやってきたこともあり、異国船自体は珍しいことではなかった。しかし、日本最大の千石船・百トンに比べ、ペリー艦隊の蒸気船は二千トン以上、サスケハナ号に至っては二千四百五十トンものその大きさであり」

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【818】第2話 A2 『幕府の反応』≫

○江戸城・外観(夕)

 

○同・御用部屋(夕)
使いの者が報告をしている。
在府の浦賀奉行・井戸弘道(65)を中心に、阿部、忠優、牧野、乗全の老中陣、若年寄陣、井戸覚弘、本郷泰固が集まっている。
若年寄陣が、ガヤガヤと『えらいことになったの』だの話をしている。
使い「内海に侵入してきたのは、その旗印からメリケン国の艦隊だと思われます。浦賀沖まで侵入し、当地に投錨、現在停泊中であります。艦船4隻のうち2隻は、帆を畳み黒煙を吐き、船体の横についている巨大な水車により飛ぶ鳥の如く疾走、とてつもない速度で動き回る怪物にございます。しかもその4隻は何十もの大筒を装備し、船員は戦闘配置についており、一触即発の状況にございます」
弘道「ご苦労」
下がっていく使い。
一同「・・・」
一同の目が自然と忠優の方へ行く。

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【819】第2話 A3 『大砲、発射さる』≫

○海岸(夜)
夕日がすでに落ち、あたりが暗くなっている。
海岸で船に乗ろうとしている象山とその一行。
象山「なに、この風だと船が出せんだと。この緊急事態、一刻も早く浦賀に行かねばならぬのだ。ええい、くそ」
歩き出す一行。

 

○江戸城・御用部屋(夜)
忠優をはじめ、井戸、川路、水野が集まっている。
忠優「おそらくクルシウスの申す通り、最新鋭の蒸気船、最新鋭の大砲だ。もし戦ったら一方的な殺戮となろう」
水野「や、やはり戦力の差はそれ程までにございますか」
うなずく忠優。
川路「西洋の大砲の射程距離については、崋山先生主催の尚歯会でもよく話題になりました。我が国の臼砲の3倍も4倍も遠くまで飛ぶ。4倍も遠くから大砲を撃たれてはそれは戦にはなりますまい」
水野「よ、四倍・・・」

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