【892】第6話 C4 『音吉』≫
○長崎奉行公邸・門
英国一行が門を入っていく。
音吉の緊張した表情。
音吉「・・・」
○長崎奉行公邸・応接室
水野と永井が座っている。
相対する英国一行。
どちらとも口を開かない。
音吉、ちらりとスターリングを見る。
スターリングは相手の出方を見てやる、という態度でふんぞり返っている。
音吉、しびれを切らしてスターリングに何か話しかけるが、手で追い払われる。
音吉「・・・」
永井が水野に耳打ち、水野頷く。
水野、いきなり話し始める。
【891】第6話 C3 『切腹』≫
○間宮海峡
ロシア船1隻が3隻の船に追われている。
3隻はイギリス国旗を掲げている。
○イギリス艦・艦橋
副官が司令官に報告している。
副官「前方の国籍不明の艦船は停船命令に従わず逃亡を図っております」
司令官「ロシア艦だな。追いつめて補足するぞ」
副官「この先はタタール湾、行き止まりですので袋の鼠です」
○ロシア艦・艦橋
副官がネヴェリスコイに報告。
副官「イギリス艦、追ってきません」
ネヴェリスコイ「ふん。奴らはサハリンは半島、ここタタールは湾だと思っているのだ。追っては来まい」
【890】第6話 C2 『反抗』≫
○奉行所・御白洲
井戸が審議している。
板間には象山。
井戸「其の方、十年来厚く国家のため外寇を患え、ついにこの度のことに及んだ段、その志は感心なり。さりながら、重き国禁を侵す段は恐れ入るか」
象山、きっぱりと
象山「わたしは国禁は犯していない」
かすかに、あちゃーとなる井戸。
井戸「松陰は認めておるぞ、弟子が認めておるのに、師たる其の方は認めぬのか」
象山「認めません。なぜなら国禁は既に国禁ではないではありませぬか」
井戸「なにぃ」
象山「ジョン万次郎です。あの者は漂流によって国禁を侵したのにもかかわらず、幕府に通辞として召し出され、いわば『官許』となった。ですから私は寅次郎らには、ジョン万次郎に倣って風に任せて漂流したという形を取りなさい、とは言いました」
ピクッとなる井戸。
象山「それは国禁を侵したことにはなりますまい」
井戸、表情が変わる。
井戸「おい、それを言うか、佐久間」
象山「言いますとも。万次郎が官許されたということは、海外に渡航することも探索の人を送ることもいずれ官許になるだろう。だがまだ正式でない以上、万次郎と同じように漂流の形をとる、それは国法に準じたという思いはあっても、背いたつもりは毛頭ありません」
井戸「ばかもん!!」
【889】第6話 C1 『北緯50度』≫
○樺太・久春古丹
岬の上にムラヴィヨフ哨所が見える。
そこへ向かっていく日本の役人。
浜には堀や村垣らがいる。
堀「なにぃ、一人のロシア人もいないだと」
役人A「はい。要塞は空っぽです」
村垣「どういうことでしょう。今月ここで交渉する約束を長崎表がしたはずですが」
堀「おのれぇ。俺では役不足という訳か。くそ。馬鹿にしやがって」
村垣「それにしても変です。我らをバカにしたところで基地全体が撤退することはないでしょう」
堀「そ、それもそうだな。ではどういうことだ。
村垣「分かりません。ですがこの様子だと何らかの理由でこの要塞は放棄したということですから、しばらくは奴らは来ないのではないでしょうか」
堀「よし、このまま北上しよう」
村垣「え、一度戻らずにこのままですか」
堀「戻っても時間の無駄だ。国の境まで行くのだ。北緯50度まで」
村垣「北緯50度・・・」
遠くを見る堀。
【888】第6話 B4 『カムチャッカ攻防戦』≫
○港
イギリス国旗を掲げる船。
港の外に浮かぶイギリス艦隊、砲撃を始める。
港の大砲も砲撃を始める。
戦闘状態。
長崎で攻撃が始まったと思いきや、陸地にロシア国旗が見える。
港の奥の方に隠されているロシア国旗を掲げる2隻の船。
イギリスの上陸船がいくつも港に近づき上陸をしていく。
それを阻止しようと激しく抵抗するロシア兵。
上空に画面が上る。
そこは長崎ではなく、カムチャッカ半島だった。
『ペトロパブロスク・カムチャッキー』
【887】第6話 B3 『日英初交渉』≫
○長崎・大通り
長崎の大通りを進む英国艦隊使節。
大勢の英国兵に先導され、数基の騎馬に乗る将校。
その行列を珍しそうに見る長崎市民。
その行列が長崎奉行公邸に入っていく。
『長崎奉行公邸』
○長崎奉行公邸・応接室
四角いテーブルを前に水野と永井が立っている。
緊張の表情。
コンコンというノックの音。
『入れ』と部下の声。
入ってくるスターリングや将校たち。
その中に中国人通訳の格好をした音吉。
全員入り終わると、両者立ち尽くす。
一同「・・・」
永井「どうぞ。おかけ下さい」
永井がまず座って見せる。
英国勢も座る。
そして、沈黙。
一同「・・・」
水野「長崎奉行・水野筑後守でござる。こちらは御目付・永井岩之丞。貴殿らはエゲレス国の方々とお見受けする」
こそこそと通訳する音吉。
スターリング「英国貴族のサー・ジェームス・スターリング提督である。我々は大英帝国海軍東インド・チャイナ艦隊である」
【886】第6話 B2 『石川島造船所』≫
○石川島造船所・全景
造船所の風景。
『水戸藩・石川島造船所』
建造中の洋式帆船船が見える。
○同・内
建造中の船をを見学している阿部・忠優・斉彬・慶永ら。
説明している斉昭や東湖。
阿部「これが水戸家の洋式船ですな」
斉昭「旭日丸と命名予定である」
慶永「旭日丸、まさに日の丸を掲揚する我が国初めの艦船に相応しい名ですな」
阿部・斉昭「・・・」
【885】第6話 B1 『北町奉行所』≫
○北町奉行所・門
北町奉行所の看板。
○同・御白洲
松陰が板間で審議を受けている。
審議をしているのは北町奉行の井戸。
井戸「吉田寅次郎、おまえが三月二十七日に密航を図ったことはおよそ分かった。だが、一点だけ分からぬことがある。それはおまえの師・佐久間象山のことだ。此度の密航計画については、象山は関知しない、と言っているが」
松陰「はい。象山先生は一切関係がありません」
井戸、ため息をつき、
井戸「おまえはそう言うが、象山の方は横浜の屯所で会ったことを白状しているぞ。隠しだては無益だ。これまでの陳述でおまえは何一つ隠し事をしていない。国のために死を決して事を行ったことは明明白白である。象山のことについてのみ事実をあいまいにごまかすのは、さぞかしその師恩を思っての苦心であろう。お前が覚悟を決めて事をなしたこと、師のみがそうした覚悟のないことがあろうか。おまえが師のことを思って隠し立てをしても、象山の方では隠し立てをしていないではないか。私はいま将軍の命によって事を正しく処理しようとしているから無駄な苦心をするな」
考え込んでいる松陰。
松陰「先生と会ったかと言われれば、確かに横浜でお会いしました。しかし、下田の決行については何ら関与しておりません。『投夷書』を見てもらいましたが、あくまで私が書いたもので先生が指示したものではありません。御奉行は先生が私に策を授けたように疑っておられる。私たち二人がしたことは師が考えたことなのであろうと。しかし、それは罪なき師を強いて罪に落とす行為であります」
【884】第6話 A4 『イギリス艦隊、来襲』≫
○クリミア半島
クリミア半島の地図。
陸上戦・海上戦が繰り広げられている。
イギリス・フランス、ロシア国旗。
N「西暦1854年(嘉永7年)3月23日、イギリスはクリミア半島をめぐる争いでフランスと共にロシアに対し宣戦を布告、クリミア戦争は大規模化し、その戦闘地域は極東・カムチャッカまで及んだ」
○長崎・出島
『長崎・出島』
オランダ国旗を掲げた船が並んでいる。
それらが後ろから来た船たちに場所を譲るように退いていく。
後ろから現れたのは4隻の艦隊。
イギリス国旗を掲げている。
○奉行所・外観
声「なんだと」
○同・中
執務をしていた水野と永井、同時に立ち上がる。
水野「エゲレスの国旗を・・・」
永井「・・・」
永井と顔を見合わせる水野。
長崎湾に浮かぶ英国艦隊。
展望場から艦隊が来ているのを見つける二人。
水野「エゲレスがついに来た。しかもこの長崎に」
永井「メリケンの条約締結を聞きつけてきたのでしょうか。それならば下田や浦賀でなく、なぜ長崎に」
【883】第6話 A3 『新香港総督ボウリング』≫
○香港
香港の風景。
多くの西洋船が停泊し、コロニアル風建築物が軒を連ねている。
○英国総督公邸・外観
華やかな洋館。
○同・庭
ペリーが歩いている。
マーシャルと話しているジョン・ボウリング(62)の前で止まる。
ペリー「失礼します。ジョン・ボウリング英国香港総督でいらっしゃいますか」
マーシャルがペリーに嫌な顔をする。
ボウリング、ギロっとペリーを見る。
ペリー「アメリカ太平洋艦隊司令長官マシュー・ペリーでございます」
ボウリング「・・・」
ボウリングが返事をしないのを見て、言葉に詰まるペリー。
マーシャルが厭味ったらしく話す。
マーシャル「申し訳ございません。アメリカ人は貴族社会の伝統を知らぬゆえ、どうも無粋になってしまう故」
ペリーに向かって蔑んだ目で
マーシャル「君、サーをつけたまえ、サーを」
ペリー「・・・」
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