開国の父 老中・松平忠固

【882】第6話 A2 『鳳凰丸』≫

○品川・御殿山
陣幕が張られ、式典が開かれている。
中央に座っている阿部、忠優ほか老中陣。
後ろには諸侯。斉昭・慶永・宗城・斉彬の姿も見える。斉彬の脇にいるのが西郷。
阿部「やっとペルリが去りましたな。函館・下田とまわって。だが・・・とても安心できる状況ではない」
忠優「うむ、ロシアもまだうろついておる。長崎から今度は樺太に向かったようだが。川路」
川路、隣にやってくる。
川路「はい。ロシアとの交渉状況ですが、ぶらかしに終始していますが、相当に執念深いですな。私が樺太まで行かずに大丈夫でしょうか」
阿部「堀なら任せられる、少々短気な部分はあるがな。それに、北で行うのは国境の確認だけだ」
川路「ロシアの軍事基地が久春古丹に築かれたとのことで心配です。いずれにしろ、堀織部正の報告待ちですね」
忠優「水野から気になる知らせも来ておる。ロシアとエゲレス・フランスが戦争を始めたという」
阿部・川路「なんですと」

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【881】第6話 A1 『バルチック艦隊』≫

○日本海海上
はためく日の丸。
その日の丸がはためいている軍艦。
近代的戦艦の艦隊、なんと108隻にも及ぶ。
日本海軍連合艦隊の勇壮なる行軍。
『日本海・対馬沖』
そこかしこからサイレンが響き渡る。
前方より艦隊が接近してくる。
接近する艦隊にはロシア国旗。
放送「総員戦闘準備、繰り返す総員戦闘準備。敵バルチック艦隊11時方向より接近中。射程距離まで2.5海里」

 

○旗艦『三笠』艦橋
『日本海軍連合艦隊旗艦【三笠】艦橋』
緊迫した艦橋内。
指揮官の面々。
落ち着いた表情の中に強い決意の感じられる表情の東郷平八郎。
参謀「東郷大将閣下」
東郷「うむ」
参謀「東北東160°回頭準備並びに砲撃準備、目標敵艦隊先頭艦」
操舵士「東北東160°回頭準備並びに砲撃準備、目標敵艦隊先頭艦」
東郷、すっと右腕を上げる。
東郷「回頭!!」

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【880】第5話 D4 『日の丸』≫

○阿部邸・外観(夜}
満月が輝いている。

 

○庭に面した応接間(夜)
阿部、忠優を迎えている。
月見をしている二人。
阿部「此度の事、誠にかたじけなかったでござる」
忠優「何のことでしたか」
阿部「上様にこの伊勢を慰留するように言上してくれたとか」
忠優「そのことですか。なに、礼には及びませぬ。なぜなら」

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【879】第5話 D3 『左遷』≫

○水戸藩邸
斉昭、藤田東湖らを前に
斉昭「ワシは辞める。断じてやめる」
東湖「殿、お待ちください。早まってはなりません」
斉昭「早まるも早まらないもあるか。伊勢め。もし上様が慰留されなかったらどうするつもりだったのじゃ。自分だけとっととやめてその後の面倒は全てわしが負わさたというのか」
東湖「まさか、伊勢様に限ってそんなことはありますまい」
斉昭「ワシは聞いてなかったぞ。ワシに相談もなし、ということは同じ事じゃ。冗談じゃない。ワシは田園のカカシか」
東湖「・・・」
ため息をつく東湖。
N「嘉永7年(西暦1854年)4月30日、徳川斉昭は海防参与を辞任した」

 

○彦根藩邸
大名行列がまさに出発しようとしている。
N「一方、5日後の5月5日、彦根藩は警護地を羽田・大森から京都に変更となり、この日京へ向けて出発しようとしていた」

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【878】第5話 D2 『逮捕』≫

○松代藩邸
松陰が大砲の整備をしている。
そこへ幕士数名が入ってくる。
藩士「何事か」
幕士「佐久間象山に捕縛状が出ておる」
藩士ら「なんですと」
みな象山を見る。
象山「わしがいったい何をしたというのか」
幕士「吉田寅次郎は貴様の弟子であるな。そしてその吉田をそそのかし、密航を企て国禁を破ろうとした、との疑いがかかったおる」
驚いた表情の象山。
象山「寅次郎が捕まったのか」
幕士「渡航に失敗し自首してきた」
象山「・・・」
やばいという顔の象山。

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【877】第5話 D1 『慰留』≫

○将軍謁見の間
上段の間に将軍家定が座している。
下段には、徳川斉昭をはじめとする御三家・御三卿、松平慶永らの御家門、溜間をはじめとする譜代大名、外様大名が列座している。
『嘉永7年(西暦1854年)4月10日』
下段の最前列に、阿部以下老中6人が平伏している。
阿部「此度のメリケン国との和親条約締結に際し、ご公儀を混乱させ、公方様に置かれましては過分なご心配をおかけしましたこと伏してお詫び申し上げます。その責任を取り、私、福山藩主阿部伊勢守正弘は、その責任を取り老中の職を辞したく、お願い奉りまする」
斉昭「なっ」

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【876】第5話 C4 『家定 vs 忠優』≫

○江戸城・外観
桜は散り葉桜になっている。
家定の声「今日これから拝謁じゃと」

 

○同・庭
鯉に餌をあげている家定に対し、本郷が言上している。
本郷「はい」
家定「余は今日は忙しいのじゃ。鯉に餌をやらねばならぬし、午後には松の選定もしなければならぬのじゃ。そんな時間はないぞ」
本郷「ですが、伊賀守様がどうしても火急の用とのことで」
ピクッとそれまでおどけていた家定の表情にわずかに真剣な色が見える。
またおどけて
家定「伊賀守か。余はあやつは好かん。あやつはどうにも偉そうじゃ」

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【875】第5話 C3 『自首』≫

○海岸(早朝)
海岸に上っている朝日。
砂浜をかけている二人の男。
松陰と金子。
決死の形相。
浜に打ちあがっている船に駆け寄り、中を見る。
中を確認したら、さらに向こうの船の中を見る。
はぁはぁ息を切らす二人。
金子が座り込む。
松陰「もはやこれまでか」
金子「せ、先生、これまでとは・・・」
松陰「止むをえまい、番所に自首しよう」
金子「な、じ、自首でござりますか」
松陰、うなずく。
金子「わざわざ自首することはないではないですか。まだ朝は早い。幸い誰も見ておりませぬ。このままこの場を立ち去りましょう」

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【874】第5話 C2 『クーデター、発覚』≫

○阿部邸・応接間(夜)
閉め切られた狭い応接間。
阿部が悩み顔で座っている。
書状を読んでいる忠優。
忠優「これは・・・」
阿部「読んでの通り、私と御老公を公儀から追放する陰謀でござる」
忠優「・・・」
阿部「彦根藩主・井伊直弼と若年寄・内藤頼寧が結託、溜間諸藩、津藩主・藤堂高之等と共謀し、彦根を大老に、先々代将軍・家斉公の実子であられる津山藩主・松平斉民様を参与を据える、というもの・・・。上様のお手に届く寸前に本郷が間違えたふりをして私に送ったのです」

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【873】第5話 C1 『密航』≫

○下田湾(夜)
小船を漕いでいる松陰と金子。
その先にはペリー艦隊がある。

 

 

○旗艦ポーハタン・甲板(夜)
カンカンと梯子を上ってくる音。
不審に思い、梯子に近づくと日本人が二人甲板に上がってきた。
驚く当直の水兵。
水兵「ヘイ。日本人が何をしに来た。帰れ、帰れ」
松陰「違う、攻撃しに来たのではない。私たちはこの船に乗せてほしいのです。貴国に連れて行ってほしいのです」

 

○同・提督室(夜)
コンコンとノックの音。
ノックの音に目が覚めるペリー。
ペリー「どうした」
コンティの声「お休みのところ失礼します。二人の日本人が甲板に現れまして」
ペリー「日本人だと。奇襲か」
コンティの声「いえ、そうではなくどうやらこの船に乗せてほしい、と言っているようで」
ペリー「なに」
考えるペリー。
ペリー「よし。すぐ行く。通訳のウイリアムズも起こすように」
コンティの声「了解」
ペリー、起き上がりつつ、時計を見る。
午前2時を差している。

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